メチャクチャな政治家に人生を壊される「役人という生き物」の悲しみ

こうして「忖度の構造」は維持される
大原 みはる プロフィール

それでも従うのが役人

しかし、いくら「困った社長」が送り込まれてきても、政治の場合、それは有権者の意思である。民主主義のもとでは、上司に不満だからといって部下は仕事をサボタージュするわけにはいかない。いや、現実はむしろ逆で、公務員は根が真面目だから、ハチャメチャなトップであるほど健気に尽くそうとする。

実際のところ、選挙で選ばれたお役所トップの政治家の周りには、優秀な公務員スタッフが配置され支えるのが普通だ。マネジメント経験が豊富で、バランス感覚や決断力にも優れたトップを迎えれば、まさに「鬼に金棒」の状態になるわけだが、逆に力不足のトップが、「社長」の椅子に座っても、見た目の上では何とかなってしまうものだ。

 

その裏で、困った政治家を「社長」に戴いた役所の事務方は、メディアに明かされないところでとにかく苦労している。その状況たるや、冒頭で触れた同族オーナーたちに振り回されるブラック企業従業員と通じるものがある。

たとえば、執務室の模様替えで散々わがままを言われた、出張中の急な食べ物のリクエストであたふたしたなど、飲み会の肴になるような細かい逸話だけでも枚挙にいとまがないが、本当に問題なのは、政治家が自分の政治生命の維持のため行政運営を私物化し、国民・住民の利益に反するおそれがあるようなことをしても、それが世の中であまり認識されないケースだ。

政治家は「敵」を作りたがる

特定の政治勢力や業界、あるいは役所の事務方を「敵認定」して、メディアを通して有権者に対して「私は巨悪と戦っていますよ」アピールを繰り返す政治家が、(地方の首長の場合は「行政改革」などを公約に掲げて)役所の「社長」になることは少なくない。過去には国の某省を「伏魔殿」とまで称した大臣や、できもしない地方議会冒頭解散を掲げて選挙を戦った知事のケースをご記憶の方も多いだろう。

役所側は、たとえ「社長」がどんなに理不尽なことを言って戦いを仕掛けてきても、反論手段を持っていない。基本的には政治家を立てて、可能な限りうまく立ち回り、「大人の対応」でやり過ごそうとする。