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農水省次官人事が示す「日本の農業改革の挫折」また補助金漬けに逆戻り

「規制改革路線」は数年で退場へ

「所詮、官邸主導の農林水産省改革なんて2年も持たなかった」

同省詰めの全国紙記者は、今月の幹部人事で「亜流」の末松広行次官が交代し、保守本流である生産局出身の枝元真徹官房長が後任として就任することが確実視されていることを受けて、こう吐き捨てた。

末松氏は、前次官で「規制改革論者」として名高い奥原正明氏から続く改革路線を引き継いできたが、その流れも終わることになりそうだ。江藤拓農水相の関心も畜産業界にいかに補助金を回すかに集中しており、今後は「補助金漬けの農林水産業界に逆戻りだろう」(同省幹部)と業界関係者の間では諦めの声が上がっている。

 

「改革派」の院政も終わる

農水省では2016年、菅義偉官房長官の強い後押しもあり「規制改革論者」として鳴る奥原正明氏を前次官に据え、JAグループを束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)の改革や減反廃止など改革路線を推し進めてきた。

奥原氏は2年の任期を終え18年7月に退任してからも、顧問として「院政」を敷き、養殖業への民間参入を促すことなどを柱とした漁業改革を主導した。この経緯については、筆者記事「水産業界『戦後最大の改革』と、ニッポンの漁業『哀しき現状』」に詳しいので、参照いただきたい。

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奥原氏は自身のライバルだった元次官の本川一善氏のお膝元で、同省内の保守本流だった畜産などを所管する「生産局」の幹部を粛正したことで有名で、「今やまともな事務官は払底してしまった」(同省OB)ほどだ。

元々、奥原氏の後任の末松氏は小泉純一郎政権で2002年から首相官邸に出向し、首相を補佐する内閣参事官を約4年半務め、農村振興局長などを歴任した後、2016年6月からは経産省との幹部人事交流で同省産業技術環境局長に就任した「亜流」の人材だ。末松氏の次官抜擢は、「およそ次官になれるなどとは本人も思っていなかっただろう」(同)と周囲から言われるほど、異例中の異例の人事だった。