佐野史郎、武藤十夢ら出演…映画「おかあさんの被爆ピアノ」誕生秘話

「原爆を経験したピアノ」が伝えること

原爆から奇跡的に焼け残った「被爆ピアノ」と、被爆2世の調律師・矢川光則さんの実話をもとに、佐野史郎さんと「AKB48」の武藤十夢さんのダブル主演で描くオリジナル映画「おかあさんの被爆ピアノ」。

自身の事故体験、大杉漣さんの遺志をついで主演を務めた佐野史郎さんのこと、災害により困難を極めた撮影……映画完成までの知られざるエピソードを、秘蔵写真とともに、五藤利弘監督が振り返ります。

はじめて目にした「原爆ドーム」で

「おかあさんの被爆ピアノ」について、振り返ると色んなことが思い出される。
2008年の秋、被爆ピアノ調律師の矢川光則さんを訪ねて広島に向かったのがこの映画に取り組む第一歩だった。

僕は広島カープがリーグ初優勝をして「赤ヘル軍団」人気が出た1975年からの広島カープファンなのだが、広島にはそれまで行ったことがなかった。矢川さんに会うために訪れた初めての広島は、そうした個人的な理由でとても興奮した。

 

しかし、そうした感慨は原爆ドームの前に立ってすぐに消え失せた。

目の前に仰ぎ見て、言い表せない厳かな気持ちになった。

そのときの何とも言えない感覚はずっと憶えている。空気感というか「気」が違うような感じだった。やはり言葉では表せない。