2020.07.17
# アパレル

紳士服業界、なぜか「AOKI」と「洋服の青山」の明暗が分かれてきたワケ

実は「価格表示」がキモだった…
小島 健輔 プロフィール

「購買慣習を変える」のはあまりにリスクが大きい…

テイラーズ・ブランド社も買収したJos.A.Bankが青山商事同様、二着セールどころか「Buy 1 Suit Get 7 Items」まで駆使した価格訴求を行なっていたのをシンプルな「正価」表示に改めたところ、顧客の混乱を招いて売上が急落し、株価は15年6月の66ドルから16年1月には10ドルまで急落した。

買収した側のメンズウエアハウスはEDLP型の販売政策だったので、Jos.A.Bankも同様な販売政策に変えようとして顧客の離反を招いたと思われる。単価の張るスーツは何らかの着用機会か販売イベントがあって購入する性格が強く、二着セールなどの仕掛けを欠いては売上が減ってしまう

 

同様な事例は2012年のJCペニーでも起きた。連日バーゲン状態に陥っていたJCペニーはアップルストアを成功させた立役者ロン・ジョンソン氏をCEOに招いてITとブランドショップ揃えで正価販売を実現しようとしたが、既存店売上は12年第1四半期が▲18.9%、第2四半期が▲21.7%、第3四半期が▲26.1%、第4四半期が▲31.7%と加速度的に悪化し、13年1月期の売上は24.8%も減少して13億ドルの営業赤字を計上したという“事件”だ。全米業界最高の年俸5300万ドルで招聘したロン・ジョンソンの“革命”は17ヶ月と1週間で終わり、同氏の解任で終わった

西友を傘下に入れたウォルマートもEDLPへの切り替えに苦労し、西友を復活させるには至らなかったから、セール訴求からEDLPなど正価販売への切り替えが如何に困難か理解されよう。一度、顧客の購買慣習に定着した販売政策を変えるのは想像を超えるリスクがある。

顧客としては、“お約束”になった購買慣習を一方的に変えられるのは合理性があっても抵抗がある。百貨店のカード会員優待でも、購入時値引きからポイント積立による事後値引きに変えた時は相当の抵抗があった。ゆめゆめ顧客を御し易い羊の群れなどと勘違いしないほうが賢明だ。

(株)小島ファッションマーケティング 小島健輔

SPONSORED