グルメブームは若者の間で流行っている言葉を後追いすることが多い。
2010年に「女子会」というワードが流行したときには、おしゃれなラウンジだけでなくこれまで女性向けではなかった大衆居酒屋までもが「女子会向けプラン」の提供を始めた。
「インスタ映え」というワードが流行したときには、「チーズタッカルビ」や「ハットグ」など見た目のインパクトが強い料理が巷にあふれたのは記憶に新しい。
「インスタ映え」に続き、昨今来ている言葉が「エモい」だ。「エモい」とは、英語の「emotional」を由来とした「心が動かされた状態」のことを指し、懐かしいや心に沁みる、切ないなど、古典の「もののあはれ」に近い感覚である。
そして昭和の喫茶店を代表するスイーツである固めプリンは、パンケーキやかき氷などの派手さはないものの心の奥底にジワリと広がるノスタルジックな感覚を感じられる。これが令和を生きる世代に受けているのだ。
プリンと聞いて読者はどんなものを思い浮かべるだろうか? 十中八九、お皿にのせられてカラメルをかけられた台形のカスタードプリンを想像するだろう。Googleで「プリン イラスト」で画像検索してみると、出てくるのは9割方喫茶店で提供されるような固めプリンだ。
しかし、1~2年前は世の中に散らばっていたのは、ほとんどが瓶に入りひっくり返すことができない柔らかめプリンだった。プリンといえば昔から人気のスイーツであったが、なぜか一般的なイメージと提供されている商品のギャップが生まれてしまっていたのだ。
そのギャップが生んだ隙間に、この度固めプリンが流通することにより一気に需要がなだれ込んだのだ。