教育ジャーナリスト・おおたとしまささんのベストセラー『21世紀の「男の子」の親たちへ』(祥伝社)。ここから抜粋して掲載した「開成・灘ら名門男子校教師の提言『くそばばあ』と言われたこう答えよ」という記事は大きな反響を呼んだ。多くのコメントが寄せられたが、その中に「息子の反抗期はそうかもしれないけど、では娘の反抗期はどうすればいいのだ」というものもあった。
思春期の「親と子」という関係性でいえば、ジェンダーの差のみならず、葛藤にも様々な種類があるだろう。だが今回は『21世紀の「女の子」の親たちへ』という本も上梓しているおおたさんに、「父親と娘の葛藤」に焦点を絞って新たに名門女子校の教師たちに取材していただいた。
いちいち説教や反論をするのはダメ
ついこの間まで目に入れても痛くないと思っていた娘から、「キモい」「こっち見ないで」など言われてしまう。思春期の娘をもつ父親の通過儀礼のようなものかもしれません。
「これも成長の一コマ」と頭では理解しているものの、あんまり言葉が過ぎるようならば注意もしなければと感じるものです。しかしちょっと注意するとこれまた猛烈にコミュニケーションを拒絶されてしまったりもする。やっかいです。
こんなときにはどう対処すればいいのか。雙葉、女子学院、ノートルダム清心のベテラン先生たちに聞きました。
雙葉の理事長・和田紀代子先生からのアドバイスは、「あえて何もおっしゃらないほうがよろしいでしょう。具体的な指摘をされても反論なさらないこと。ただ、思い当たることがあれば、そのことに心がけてください」。
同じ土俵に乗るなということです。
女子学院の院長・鵜崎創先生(崎の字は本来は立つに可)は「父親を傷つけようとしているのではなく、自分の領域にこれ以上入ってこないでというメッセージだと受け止め、勇気ある撤退をすることも得策かなと思います」と言います。
でもそれではまるで腫れ物に触るかのようです。本当にそれでいいのでしょうか。
「親としてはもっと言い方があるだろうと感じるでしょうが、本人は自分の領域を守ることで精一杯で、適切な言葉を選ぶことや相手の心情を慮るだけの余裕がないのかもしれません。ある程度の年齢までは『その言い方はないんじゃないの?』などとやりあってもいいようには思いますが、深追いはしないことです」(鵜崎先生)。