何が日本のPCR検査拡充を阻んでいるのか? キーパーソンに聞く

小林慶一郎氏インタビュー前編
高木 徹 プロフィール

全員検査がもたらす安心

すでにスポーツやライブエンターテイメントの世界では、プロ野球やJリーグなどで症状のあるなしにかかわらず全員検査が行われ、活動の再開に繋がっている。

墨田区保健所では、同区内の音楽ホールを本拠地とする新日本フィルハーモニー交響楽団のメンバー74人に検査を行った。(https://www.city.sumida.lg.jp/smph/kuseijoho/kutyounoheya/corona/corona-message-13.html

そうすることで、選手やアーティストたちは安心して活動ができ、私たちもそれを楽しみ心を豊かにすることができる。

こうした「全員検査」に反対する人はごく少数だろう。そしてもちろん、五輪を開催するには、選手、役員、そしていくら絞ったとしても観客も含めて現在の入国者数に対応するのとはけた違いの検査体制を整えることができなければ、それはすなわち東京オリンピックの開催が不可能になることを意味する。

 

すこし話はそれるが、7月6日の「分科会」で配布された資料や記者会見の中で、無症状で感染リスクの低いカテゴリーの人々に対して検査をする際、PCR検査の「特異度」を99%と仮定すると、相当数の偽陽性の人々が出てしまう恐れがある、という主旨の話が出ていた。

特異度とは、感染していない人を正しく陰性と判定する確率のことだが、それが99%、すなわち、1%もの偽陽性(感染していないのに誤って陽性と判定すること)が出てしまうという仮定は現実的なのだろうか?

例えば、Jリーグの発表では3000人以上の選手や関係者のPCR検査をすでに2回行い、いずれも陽性者は1人も出ていない。つまりのべ6000人以上の結果である。プロ野球でも選手や監督、コーチ、球団スタッフ、審判員2000人以上をPCR検査し、やはり陽性はゼロ。

上記の新日本フィルでも陽性者は出なかった。さらには同じ「分科会」の資料の別のページには、福岡市が中州の「接待を伴う飲食店」の従業員353名を対象にPCR検査をしたところ全て陰性だった、とある。100人に1人偽陽性が出る検査で、このようなことが続けざまに起こるのだろうか。

これらの事実はは、現在日本各地で行われているPCR検査の特異度が実際には99%よりはるかに高いことを示していると考えるのが論理的だろう。

あるいは、海外では数多くの実績をすでに出している全自動検査機でも、100人に1人もの偽陽性を出すのだろうか? PSS社でも「限りなく偽陽性をゼロに近づけるように努めているし、それは可能です」と言う。

技術は日進月歩であり、現場では検査の質の向上のためにまさに命がけの努力が続けられている。新型コロナウイルス対策という、多くの人の命がかかる重大課題の方針を決める時、たとえ仮定の計算であろうと大雑把な数字ではなく、最新の現実に即したデータを精査したうえで当たってほしいと願うのは私だけだろうか。

今後の「分科会」では、こうしたPCR検査の実務家や、開発者の証言を聞くという方法もあるはずである。

再び小林氏の話に戻ろう。