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何が日本のPCR検査拡充を阻んでいるのか? キーパーソンに聞く

小林慶一郎氏インタビュー前編

私がプロデューサーの一人として制作している、NHK WORLD-JAPAN(英語放送)の番組「BIZ STREAM」(https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/tv/bizstream/)は、日本やアジア、世界の経済の話題を女性2人のキャスターがゲストコメンテイターと分析していく新感覚のビジネス番組だ(原則的に毎月第一~第三土曜日 午後11:10~初回放送)。

2年前の番組スタート以来、様々な日本のビジネスの現場を取材してきたが、今年3月以降は新型コロナウイルスとどう対峙するのか経済の切り口から伝えている。

先月の放送では、経済の専門家として「諮問委員会」に参加し、PCR検査の戦略やそのほかの観点から意欲的な提言を行い、日本の新型コロナウイルス対策のキーパーソンの一人となっている小林慶一郎氏に単独インタビューを行った。

 

その内容には、世界の視聴者からも反響をいただき、日本語でも多くの人と共有したいとの考えから、ここに機会をいただいてインタビューを再構成してお伝えし、社会的議論の深化の一助になればと願っている。

なお、当該の番組の動画は下記のリンクから配信されており、今月13日までいつでも無料で視聴が可能となっている。(13:19~の“On Site Report”のコーナー)
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/ondemand/video/2074072/

小林氏は東京大学大学院工学修士、シカゴ大学経済学博士、経産省、慶応大学経済学部教授を経て現在は東京財団政策研究所(https://www.tkfd.or.jp/)研究主幹、キャノングローバル戦略研究所研究主幹、経済産業研究所ファカルティフェロー、慶応大学客員教授を兼職しており、著作や寄稿も多く、いったいいつ寝ているのだろうと不思議になる活躍ぶりだ。工学と経済学の幅広い学識、さらに官僚としての政策立案、決定の実務に通暁している。

小林慶一郎写真提供:東京財団政策研究所

さらには、前述の「諮問委員会」に加えて、インタビュー実施後の今月6日に初会合を開いた「新型コロナウイルス感染症対策分科会」にもメンバーとして選ばれ参加している。

その小林氏に聞く今回の前編は、小林氏の主要な論点であり、社会の関心も非常に高いPCRをはじめとした検査戦略のあり方についてである。

受け身の対処から攻めの戦略へ

――まず、基本的な考え方からおうかがいします。私たちはCOVID-19で少しでも人命が失われないようにと数ヵ月にわたりさまざまな「自粛」をしました。そのために感染の広がりは少なくともいったんは下降線に向かいました。同時に経済には大きなダメージもありました。感染症対策と経済の維持のバランスをどのようにお考えですか?

小林: 経済と人命のトレードオフという考え方ではなく、経済そのものも人命に関わっていると考えないといけないと思っています。感染症で死ぬ人を減らすことを第一に考える一方で、経済の状態が悪くなると経済的な理由によって自殺をしてしまう方のような例がたくさん出てきます。

例えば1998年に日本で銀行危機があったときに経済の悪化は今よりも全然軽かったのですが、それでも年間で1万人ぐらい自殺をする人が増えました。それだけでなく、その後10年以上にわたって自殺者が1万人増えた状態が続いてしまいました。

だから経済的な混乱が起きると、結果として数万人とか10万人という単位で人命が失われる可能性があることを考えないといけません。最初の感染症のインパクトが薄れた後は、感染症と経済の被害、同じ人命被害の両方をきちんと考えながら、被害が全体として最も少ない政策を考えていかないといけないと考えています。

――感染症と経済の両方の人命損失を防ぐため、PCRをはじめとする検査体制が決定的に重要だと主張されていますね?

小林: 消費者がいちばん不安に思うのは、街に出たらどれだけ感染のリスクがあるかということです。しかし、これまでのやり方では、市中感染がどのくらい広がっているか分からないので不安はおさまりません。

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