老老介護の末、コロナ禍のなかで妻を喪った財津一郎さんの告白

「ママと生きられて、幸せだったよ」
週刊現代 プロフィール

命はつながっている

医師の強い反対を押し切り、2日間だけ病院を出る許可をもらった財津さんは、自宅でミドリさんの通夜と告別式を取り仕切った。

入院は2ヵ月を超えたが、四十九日にあたる3月末にもまた退院し、自分の手で、ミドリさんの骨を墓に納めた。

新型コロナウイルスの国内での感染者数が1200人を超え、出歩くことすらはばかられる状況下での納骨は、慌ただしいものになった。

「その後は、コロナ禍が爆発的に広がって、お墓参りに行けるような雰囲気ではなくなってしまった。なかなか会いに行けないのが、本当に申し訳なくてね。

いまも毎朝目が覚めると、まずは遺影に語りかけます。『ママ、おはよう、今日は暑くないかい?』って」

長年住んできた自宅は、お湯が出なくなるなど、老朽化が目立ってきた。スロープもなく、上り下りが膝にこたえる。

だが、財津さんは、ミドリさんと過ごしたこの家を、終の住処にすると心に決めている。
「朝起きて、夜寝て、また朝が来る。変わらない日々の繰り返しだけど、僕にはこの家を守る義務がある。ママとの思い出がたくさん詰まっているからね。家をやつれさせてはいけない。

あとは、生前整理を進めています。来るべき日に、せがれや孫に迷惑をかけることはしたくない。人生最後の『ホームストレート』を綺麗に駆け抜けたいんです」

ミドリさんと暮らしていた頃と変わらず、食事の準備も洗濯も、すべて一人でこなしている。現在の唯一の楽しみは、大学3年生の孫・優太郎さんの成長を見守ることだ。

 
現在の財津さん(左)と孫の優太郎さん(ご本人提供)

「孫は、大学を出たら本格的に役者の道へ進むつもりなんです。僕は引退してずいぶん経っているから、手助けしてやることはできない。遠くから見守るだけです。

でも、芸能の世界に生きた僕とママの命がつながって、孫が同じ世界を目指しているというのは、不思議な気持ちになります。血は争えないというか、『人間の命は、こうやってつながっていくんだな』と。

願わくは、あと少しだけ孫の成長を見守って、それからママの元へ行けたら、悔いはありません」

妻と二人三脚で歩んだ60年。一人になった名コメディアンは、残り僅かな道のりを、ゆっくりと踏みしめている。

発売中の『週刊現代』ではこのほかにも『激論 日本に第2波は来ない』『株の神様バフェット独占5時間「なぜ私は株を売り払ったのか」』『「Go To」半額旅行 いちばん得する予約の取り方』『いつも、そこに志村けんがいた』などを特集している。

「週刊現代」2020年7月18日号より

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