国境を越えてきた脱北者たちがいま直面している深刻な事情が浮上してきた photo/gettyimages

韓国の衝撃…ここへきて韓国から「脱南」する脱北者たちが急増していた!

命の危険にさらされる…その過酷な現実

「脱北者」たちのリアル

冷戦時代、脱北し韓国に渡ってくる人たちは「英雄」として扱われた。私が小学生だった1983年、MiG-19を操縦し脱北してきた北朝鮮軍上尉・李雄平氏のケースが代表的だ。

当時、北朝鮮の主力戦闘機であったMiG-19を持ち込んだということは相当に衝撃的だったが、現役軍人が命を懸けて脱出してきたというだけでも、熱烈な歓迎を受けるには十分だった。当時、私が購読していた小学生新聞に彼の脱出記が連載されていたことをよく覚えている。それだけ韓国を熱狂させたのだ。

休戦線を越えて南側にやってくる北朝鮮の軍人、民間人には韓国政府が住居や仕事を斡旋し、巨額の補償金を渡し韓国社会に定着するよう手厚い支援がなされた。

だが今、冷静に振り返ってみれば、それらは脱北者「個人」を尊重し、考えてのことではなかった。それらは北朝鮮と韓国が水面下で熾烈な競争を繰り広げていた冷戦時代に、韓国の優位性を宣伝する絶好の機会を作ってくれたことに対する「ご褒美」だったのである。

北朝鮮と韓国の緊張関係は続いている photo/gettyimages
 

しかし、やがて『英雄』たちの身分は『凡人』へと変容する。90年代、即ち食糧難、「苦難の行軍」として知られる時代に脱北者の数が急増したためだ。

英雄は希少価値があったからこその英雄であって、誰もが簡単になれるなら、どこででも目にすることができるなら英雄としての価値はない。「英雄」としての存在感が薄れたのは当然の帰結だ。

それでも90年代末まで累積1000名に満たなかった脱北者の数は、2000年代に入り年間2000名へと急増、2019年に至り累計3万3千名を突破した。「脱北ラッシュ」とも言われるような時代が到来したのだ。