中国・習近平、ここへきて「香港問題」に焦りまくっている「本当のワケ」

米中金融戦争になったとき、どうなる…
福島 香織 プロフィール

習近平の「思惑」

仏Natixis銀行アジア区主席エコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロがブルームバーグに「香港は中国にとってのオフショアセンターになる。国家のオフショアセンターとして、税金優遇、米ドルとの兌換、米ドル投資方面でさらなる柔軟な余地をもちうる。しかし、全世界から投資家があつまるようなグローバル金融センターにはなりえない」とコメントしていたが、その通りだろう。

ここで、中国にとっての香港の使い道、利用価値を改めて考えてみると、一つは人民元の機軸通貨化に向けた人民元国際化推進の中心としての位置づけだ。

中国はグローバル経済において基軸通貨を制するものが世界を制する、として人民元基軸化をはるかなる野望として掲げている。ドル基軸で回るグローバル経済の中で中国がデカップリングされるならば、人民元機軸のグローバル経済を生み出せばよい、というわけだ。そもそも習近平の掲げる一帯一路・シルクロード経済一体化構想とは、人民元決済圏を想定した戦略だ。

人民元国際化を推し進める習近平 photo/gettyimages
 

もっとも、人民元は基軸通貨どころか、国際通貨としてもまだまだ道半ばで、国際基軸通貨の三条件である「国際社会への総合影響力」「国際収支の大規模赤字」「安全安定の国際収支決済システム(たとえばSWIFTのような)と自由な金融市場の確立」、のうち、少なくとも後ろ二条件はまったくおぼつかない。おそらくこうした条件は、法治と市場主義が前提でなければ整わない。なので、ほとんどの専門家が、習近平政権の野望に理解を示しつつも、今すぐの話ではない、と釘をさすのである。

それでもジンバブエなど人民元がその国の法定通貨替わりに仕える国や地域はじわじわ拡大しており、カンボジアなどは中国に命じられるままに、国家として米ドル使用から脱却しようとしている。そのうち、ドルの代わりに人民元が流通していくだろう。こうした人民元経済圏を中心に香港の人民元オフショアセンターとしての地位を固めていくという利用価値はありそうだ。

香港は中国人にとって最も馴染みのある金融センターであり、国内の金融改革や人民元国際化に向けた実験を実施できる市場ともいえる。これまでならば、外資のハゲタカの干渉を恐れてできなかった香港市場における金融改革実験だが、もはや一国二制度もなくなり、法制度を中国共産党の恣意通りに動かせる

外部勢力の動きをコントロールできるだけの情報統制のメカニズムも人手も手に入れており、中央政府としては香港市場をプラットフォームにして、安心していろんな実験ができる、という見方もある。

関連記事

Pick Up

編集部からのお知らせ!

おすすめの記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/