生まれた瞬間から不利…黒人が直面する「構造的差別」の深刻すぎる現実

生誕から大学卒業までに体験すること
畠山 勝太 プロフィール
図3

答えはノーである。

一応、オバマ政権下では高校の卒業率の人種間格差は若干の縮小へと向かったが、上の図が示すように全米教育進行状況調査(NAEP)のデータを見ると、アジア系が過去20年間に学力を着実に向上させていったのに対し、白人も黒人も大して学力は変化せず(図は4年生の物だが、8年生、12年生でも同じ傾向となっている)、したがって、人種間学力格差は今も昔も変わらぬものとなっている。

学校の資金力に人種間格差があり、これが学力の人種間格差を維持させてしまっている、というのはロジックとしてはよく分かるものだが、具体的にこの資金力格差が何を引き起こしているのか。今回は教員とスクールカウンセラーの2点を紹介しようと思う。

まず教員についてであるが、豊かな学区と貧しい学区の間で教員給与は3倍も違ったりするため、NYを舞台にした論文が示す通り、白人が多数派の豊かな学区には経験豊富で学歴も高く優秀な教員が高給を求めて集まって来るが、黒人が多数派の貧しい学区には初任者や、出身校のランキングも低いどこからもお声がかからない教員が集まるならまだ良い方で、理数系を中心にそもそも教員がいないというところさえある。

 

この問題が厄介な理由は二つある。

本筋の解決策は、貧しい学区に連邦政府がお金を流し込むことであるが、これが政治的に実現できないために編み出された解決策が構造的人種間格差につけこむ形となってしまっているからだ。

団体設立の意図にそのような悪意があるわけではないので名前は伏せるが、貧しい学区で、教員免許を持っているとは限らない一流大卒の若者に2年間経験を積ませるプログラムが全米に広がっている。

一見すると、貧しい学区の人手不足も解消されるし、若者は経験を積めるし、Win-Winの関係に見えるが、なんとなく問題が緩和されたように見えるので本筋の解決策をより遠いものにしてしまう上に、何よりも苦境にあえぐ黒人の子どもたちの状況を利用して、裕福な白人がキャリアアップしていくという構図はいかがなものだろうか。

この問題点は、途上国の教育政策を本職としている私も、先進国の学生が途上国の教育ボランティアをネタに就活をし、大学を卒業したら途上国の子どもたちを一顧だにしなくなるのをよく経験するので、共感するところが多い。

もう一つ厄介なのが、教員の特徴である。米国の高卒と大卒の大きな違いの一つに、機会を求めて生まれ故郷を離れるか否かという点が挙げられる(参照「Hometown Disadvantage? It Depends on Where You’re From: Teachers’ Location Preferences and the Implications for Staffing Schools」)。

大卒の半数は生まれ故郷から100キロ近く離れた土地で働いているのに対し、高卒の少なくとも半数は生まれ故郷から10キロ以内の場所で生活をしている。

もちろん、教員は大卒以上が基本であるが、この行動に関してはほぼほぼ高卒と同じという特徴を有している。

つまり、米国の学校の先生は、そこそこ勉強ができる地元大好きっ子がなる職業であるため、黒人貧困学区に資金を投入したとしても、特に郊外の白人富裕地域との距離が遠いところには、優秀な教員が集まってこない恐れがある。

つまり、黒人の子どもと白人の子どもの格差を取り除くための本筋の教員政策がどんどん遠のくだけでなく、その本筋の教員政策が採れたとしてもそう簡単には問題が解決しない、というのが米国の現状である。