2019年以降、大麻成分CBD(カンナビジオール)を含む製品が非常に多くみられるようになってきました。グミやアロマオイルなどはよく見かけますが、最近では、シャンプー、マスカラ、入浴剤、リップクリームなど何でもアリの状況です。
実際にどこまで効果があるのかは不明ですが、リラックス効果を謳った製品がほとんどです。
こうした製品は、そもそもダメではないのか(大麻取締法違反なのか)? その効果は本物か? CBD食品やコスメは安全なのか? こうした疑問について、分析化学者として答えていきたいと思います。
私たちの大学でも「ダメ。ゼッタイ。」啓発活動はあり、薬物の使用は絶対にダメとキャンペーンをしています。
学生とも話しますが、まずは「ありえない」「恐ろしい」「逮捕される」といったリアクションが返ってきます。一般には非現実的なもの、闇の世界の話、と理解されているようです。
しかし、何かのきっかけで……ということがありうるから啓発活動は必要なのだと思います。まずはもう少し深く、このあたりを説明します。そもそも、何がダメなのか?
一般的に乱用される薬物の種類は、覚せい剤、大麻、コカイン、危険ドラッグ、幻覚剤、向精神薬などが挙げられます。それぞれ作用や危険リスクも違いますが詳細は他に譲るとして、乱用薬物のなかに大麻が含まれていることは間違いありません(毎年、国立精神・神経医療研究センターが詳細な調査報告を出しています。近年では大麻の使用実態も増加傾向にあるようです)。
「おいおい、大麻はダメでしょう。グミやアロマオイルに含まれているとはどういうことだ! 今すぐに取り締まれ!!」と絶叫したくなる人もいるはずです。その通りです。普通に考えたら、大麻コスメやお菓子などありえません。
ですが、ちょっと待ってください、「ダメ。ゼッタイ。」という言葉には主語がありません。このコラムを読まれる方は、ロジカルに突っ込む点があると気づかれたと思います。
大麻とは、古くに大麻草と言われており、いわゆる「アサ」として昔から汎用されていた植物です(詳細はこちら)。日本では『古事記』の時代から、神事の大切な原料とされ栽培も続けてきました。ちなみに、栃木県では今でも大麻草の栽培が行われています(「とちぎしろ」と言われており、栃木県が誇る農作物です。「大麻博物館」より)。
ざっくり「大麻はダメ」と言ってしまうと、「アサの服を着ている人」も「神社にいる神主さん」もすべてダメとなってしまいます。さらに、蕎麦屋で七味唐辛子をかけることも許されません(詳細はこちら)。
つまり、大麻は何でもかんでもダメではないのです。
日本では、大麻取締法という法律で、大麻の所持、栽培、譲渡などが禁じられています。ニュースで報道される大麻取締法違反は、その所持や譲渡が主な理由です。
しかし、この法律では、「使うこと」や「茎・種子やその製品」について除外項目があります。深く読み解くと、戦後の日本占領統治の問題、さらには米国の反戦運動など、深い歴史までつながってしまう。一筋縄ではいかない法律なんです(大麻取締法は違憲か? など、すぐには理解しづらい状況に……)。つまり、大麻と言っても、法律ですべてを統制することはできず、ダメとは言い切れないところもあります。
そのうえで、ざっくり「大麻はダメ」(Just Say No)としておけば、まずは安心ということでしょうか。