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香港は死んだ…国家安全法施行の中国が見据える「次なる一手」

「今日の香港は明日の台湾」が現実に…

香港市民の命運を握る法律

先週7月1日は、中国にとって「3つの記念日」となった。

一つは、中国を支配する(中国的に言うと「指導する」)中国共産党の創建99周年である。新型コロナウイルスが再燃している首都・北京では、派手なイベントは控えたが、CCTV(中央広播電視総台)を始めとする官製メディアは、習近平総書記率いる中国共産党の偉大さを喧伝していた。

二つ目は、香港返還23周年である。1997年のこの日、イギリスの植民地だった香港は、中国に返還された。中国としては、1842年の南京条約で香港島を割譲されて以来の「屈辱の100年」を晴らす吉日となった。

香港をイギリスから取り戻すことを決めたのは、1984年の中英共同声明である。その後、1990年の香港特別行政区基本法(以下、基本法)公布、1997年の香港返還及び基本法施行と続いた。

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三つ目の記念日は、中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持保護法(以下、香港国家安全維持法)を施行したことである。この新法によって、「一国二制度を50年変えない」ことが基本法で定められている香港は、返還23年にして、重要な転換点を迎えることとなった。

この新法は、その全文が公表されたのは、施行のわずか52分前の6月30日午後11時8分だった。740万香港市民の命運を握る重要な法律だというのに、それを香港市民が施行の52分前に知るというのは、極めて異例の事態である。

過去には、例えば「香港の憲法」と言われる基本法の公布は1990年4月4日であり、施行したのは7年後の1997年7月1日だ。

最近の事例を見ても、香港国家安全維持法と同じ2020年7月1日に施行された中華人民共和国社区矯正法という9章63条からなる法律は、昨年12月28日に第13期全国人民代表大会常務委員会第15回会議で決議され、その日のうちに公布されている。つまり公布から施行まで、半年以上を経ている。

 

日本の一部メディアは、「コロナ禍のどさくさに紛れて、拙速に香港国家安全維持法を可決成立させた」と解説していたが、これは違う。なぜなら、昨年10月31日に決議した「4中全会」(中国共産党第19期中央委員会第4回全体会議)の公報(コミュニケ)で、次のように記されているからだ。

〈 (香港・マカオ)特別行政区を憲法と基本法により合うよう整備し、関係する制度と機構の整備を実施する。愛国者を主体とする「港人治港」(香港人による香港統治)「澳人治澳」(マカオ人によるマカオ統治)を堅持し、特別行政区の法治能力とレベルを上げていく。

憲法と基本法に照らした特別行政区に対する中央(政府)の全面的な管理統治権の制度を行使し、健全なものにする。中央の特別行政区行政長官と主要官員の任免制度と機構、全国人民代表大会常務委員会の基本法に対する解釈制度を完全なものに整備し、憲法と基本法が中央の各艦力機関に賦与した権力を法に基づいて行使していく。

特別行政区の国家の安全を維持し保護する法律制度と執行機関を健全に建立していく。特別行政区行政長官の中央政府に対する責任負担制度を健全なものとし、行政長官と特別行政区政府の法による施政を支持する。

香港とマカオを国家発展の大局にうまく引き込み、内地の優勢な部分と相互に補完し合い、協同して機構制度を発展させる。粤港澳大湾区(グレーターベイエリア=広東省・香港・マカオの一体化)の建設を推進し、香港とマカオの経済の発展と民生の改善を支持し、社会の安定と長期的発展に影響を与える深い次元の矛盾と問題の解決に着手する。

香港とマカオ社会の特に公職者と青少年の憲法と基本法に対する教育、国家の情緒教育、中国の歴史と中華文化の教育を強化し、香港とマカオ同胞の国家意識と愛国精神を増強させる。外部勢力の香港とマカオの事務への干渉と分裂、転覆、浸透、破壊活動の進行を決然と防止、コントロールし、香港とマカオの長治久安を確保する 〉

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このように、今回の香港国家安全維持法の内容に関する骨格は、すでに昨秋の時点で決議しているのである。それから8ヵ月をかけて、着々と準備してきたのだ。5月28日には、全国人民代表大会で、この新法を早期に定めることを決めた。

 

こうした前提に立って、以下、全6章66条からなる香港国家安全維持法の主な条文を見ていきたい。

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