炎上した自民党もNHKも「わかりやすさ至上主義」の罠にハマっている

なぜ「わかりやすさ」に縛られるのか
武田 砂鉄 プロフィール

「わかった!」を焦りすぎたNHK

もう一点、最近の「わかりやすさの罪」として取り上げたいのが、NHKの国際情報番組『これでわかった!世界のいま』で放送されたアニメだ。

5月下旬、アメリカ・ミネアポリスでジョージ・フロイドさんが白人警官に膝で首を押さえつけられ死亡した一件から、黒人への人種差別に抗議するデモが拡大している。この件をふまえ、黒人と白人の貧富の格差を説明するためのCGアニメーションが、黒人への恐怖心を前提にした差別を助長する内容であると問題視された。Twitterに投稿された動画は削除され、NHKは謝罪文を発表した。

番組で紹介されたアニメーション
 

この番組について、ウェブサイトには「“とっつきにくい”国際ニュースをやさしく噛み砕き、何が問題なのか、何が重要なのか、そして何が面白いのか、お茶の間のみなさんといっしょに考えて」いくとある。そして、番組のタイトルにあるように、最終的には「これでわかった!」に行き着くことを目的としている。

シンプルに「これ」でわからせるため、黒人の言動を一律化して描いてしまう。結果、解説動画は、黒人に向けられた偏見を助長するものになった。なぜこんなことになったかといえば、「これでわかった!」に急いだからである。

NHK「国内番組基準」の「第1章 放送番組一般の基準」の「第11項 表現」で真っ先に挙げられているのが「わかりやすい表現を用い、正しいことばの普及につとめる」だ。とにかくまず「わかりやすい表現」。わざわざわかりにくい表現にひた走る必要もないが、「わかりやすい表現」を意識しすぎるあまり、目の前にある情報や光景や発言を、手短に加工してしまうのではないか。

私たちは情報を取捨選択しながら生きている。アメリカのデモ活動にしても、「道路を静かに歩きながらプラカードを掲げ、黒人の命を大切にしてほしいと訴える映像」と、「店舗のガラスを割りながら、強奪を繰り返す映像」、このどちらを多く目にするかで捉え方が変わる。様々な声があるものを「わかりやすく」絞ることによって、多様な声が失われてしまう。