炎上した自民党もNHKも「わかりやすさ至上主義」の罠にハマっている

なぜ「わかりやすさ」に縛られるのか
武田 砂鉄 プロフィール

そもそも、進化論とは、「生物のそれぞれの種は、原始生物から環境に適応しながら自然淘汰を経て進化してきたとする学説」(朝日新聞「キーワード」)とする考え方で、生き残った個体の話ではない。

自民党広報は、アメリカの経営学者が50年以上前に誤った形で引用してから流行ったものを、憲法改正に持ち込むための漫画に用いてしまった。もしも仮にダーウィンが「唯一生き残ることができるのは、変化できる者である」と述べていたとしても、生物の進化を憲法改正と結びつけること自体が奇怪である。

誤用であるとの指摘を受けた自民党広報本部がどう答えたか。朝日新聞からの問い合わせへの返答が「憲法改正について、国民の皆様にわかりやすくご理解していただくために、表現させていただきました」(6月22日・朝日新聞デジタル)というものだった。「間違っていませんか?」に対する答えが「わかりやすくご理解いただくため」だったのだ。

その後、自民党・二階俊博幹事長が、記者会見で「ダーウィンも喜んでいるでしょう」と語ったことも注目されたが、東京五輪の開催が危ぶまれていた最中に森喜朗・東京五輪大会組織委員会が「神は私と東京五輪にどれほどの試練を与えるのか」と語ったり、その五輪開催を安倍晋三首相が「(新型コロナウイルスに)人類が打ち勝った証」と位置付けたり、とにかくスケールの大きいことを言ってみるのが、あの界隈で流行っているのだろうか。無責任に拍車がかかっている。

二階俊博幹事長〔PHOTO〕Gettyimages
 

物事をわかりやすく説明するためには、ある部分を削り落として、加工して、整えて伝える必要がある。自民党広報は、わかりやすく物事を伝えたい時に、それが事実でなくても構わないと、開き直ったのである。二階は「ダーウィンも喜んでいるでしょう」と言ったが、ダーウィン、たぶん、悲しんでいると思う。

4コマ漫画で改憲を訴える手法自体が「わかりやすさ」にひた走っているが、その中身が嘘だったのだ。で、それを指摘しても、わかりやすく説明するため、と開き直る。安倍政権は時に「歴史修正主義」的と言われるが、わかりやすさのためにも歴史を修正するのだ。