20年続く人気漫画に描かれているもの

20年以上続き、手塚治虫短編賞も受賞した名作、伊藤理佐さんの『おいピータン!!』。現在は主人公の「とある事情」により『おいおいピータン!!』とタイトルが変わって連載が続いている。

長年愛されている理由のひとつは、私たちの生活に根付いた題材が言語化され、ドキッとさせてくれ、そして笑い飛ばせること。この連載は、人間の生き方が凝縮されている20年間の作品からランダムにピックアップして、そこに描かれた人間模様を「おいピータン!!人間学」として紹介しているものだ。

前回この連載で紹介したのは、3年同棲をしていたカップルが別れを決意した喧嘩の話だった。しかし遡って考えたら、体型を揶揄し合ったのがヒートアップしただけだったのだ……意外と「許せねえ!」の原因も、遡るとめちゃくちゃ小さかったりもする。人生の怒りも振り返ると、意外と喜劇色満載なことも多い。そんなことを『おいピータン!!』は教えてくれるのだ。

文/FRaU編集部

「新居探し」は「生き方探し」

今回ご紹介するのは、結婚するカップルの新居探しについて。同棲にしろ、ルームメイトにせよ、「新居探し」は簡単ではないはず。特に新婚さんの場合、その後の結婚生活に大きく作用することになる。家探しは「どう暮らしたいのか」が大きく関わってくるからだ。とにかく駅近がいい、都会がいい、自然豊かな方がいい、オートロックじゃなきゃダメ、ゴミ捨て24時間できるところがいい、部屋は小さめでもバルコニーが大きいところがいい、フローリングがいい、やっぱり日当たりがいい方が……etc.。

ひとり暮らしなら自分だけの価値観で選べるけれど、ふたり以上となると互いの意見をどうすり合わせるかが問題となる。

しかも難しいのは、お金には限度があり、いやたとえお金が潤沢にあったとしても、好みの物件がすぐに見つかるとは限らないことだ。そして、焦って探した場合、失敗する確率が高いということだ。

大家さんがお湯を沸かす音が…

筆者の場合、あるきっかけがあって、今すぐ実家を出たい! と22歳のときにワンルームマンションを探し、会社からまあまあ近い駅から徒歩7分程度のマンションに住むことにした。女のひとり暮らし、音漏れが少ないといわれる鉄筋コンクリート作り、大家さんの家の横についているタイプのワンルームアパートに「これなら安心」と他の物件を見ることなく即決で入居決定。

しかし入居してから判明したのが、大家さんの家に音が筒抜けだということだった。たぶん家族が疑似ひとり暮らしをするために作った部屋だったのだろう。よく見ると壁が埋め立ててあったのだが、もともとはつながっていた部屋だったのだ。鉄筋コンクリートマンションなのに、隣の大家さんの家からやかんでお湯を沸かす「シュンシュン」という音までが聞こえてきた……。

Photo by iStock

これが、大家さんでなくて、普通の隣人であれば、それでも嫌だけど、まだいい。
しかし、大家さんである。さすがにここに友達を呼ぶことなんてできない……。

ということで、それでもすぐ引っ越すお金はないので、2年間は家に帰って寝るだけの暮しをし、次の契約更改にむけて再び家探しをすることになった。家でのリラックスとは無縁の生活だった(のであまり帰らない生活になった)。

身軽な一人暮らしで荷物もほとんどなかったからいいけれど、ふたりだったり家族だったりするとそうはいかない。もちろん、最初からじっくり見てばっちりの物件に出会ったら、それは逃さない方がいい。でも「ここでいっか」という安易な決定は「ちょっと待った!」と思ってしまうのである。

今回ご紹介する『おいピータン!!』11巻の第3話「とりあえず箱」はまさに家探しの話。ここで伊藤さんが描いている「新居探しのカップル」は結婚することを決め、新居を探している。その新居探しにどんな問題があったのか。そして、焦った物件探しの結末はどうなったのか。

新しい生活を始めるにあたって、なんでもびしっと揃えないと! と焦ってしまう事が多いかもしれない。しかし伊藤さんの漫画を読むと、「とりあえず」もひとつの立派な選択肢なんだということに、気づかされるのだ。