昨年9月すでに武漢で「新型コロナウイルス」防疫演習が行われていた

外交部報道官「米軍拡散」説の背景か
北村 豊 プロフィール

よほどの裏でもなければ

それでは、武漢税関が、感染の中国国内への流入を防止しようとした新型コロナウイルスとは、一体何だったのか。

外交部報道官の趙立堅が「新型コロナウイルスを武漢へ持ち込んだのは米国軍かもしれない」と述べたのを聞いて、筆者が最初に思い浮べたのは、米国におけるインフルエンザの大流行である。

2020年2月19日付で米国ニュースチャネルのCNNが報じたところでは、2019年9月26日から始まった2019~20年の「インフルエンザシーズン(流行時期)」の感染者は、全米で少なくとも2600万人、死者は少なくとも1万4000人に増えたという。

趙立堅が米国のインフルエンザの大流行を念頭にしていたとしても、武漢天河国際空港で新型コロナウイルスの感染防止処置の予行演習が行われた2019年9月18日には米国では「インフルエンザシーズン」がまだ始まっていなかった。

一方、趙立堅が念頭に置いたのが、米国を発生源とする新型コロナウイルスだったとすれば、その根拠は何なのか。2019年の中頃に中国は秘密裏に開発した生物兵器である新型コロナウイルスを米国へ持ち込み、米国内で密かに拡散させたということなのだろうか。

その際に注力したのが米軍関係者に対する新型コロナウイルスの拡散であったのであれば、それに感染した米軍選手団やその関係者の入国を武漢天河国際空港で阻止するという水際作戦の構図は成立するのである。

世界保健機関(WHO)がまとめた報告書には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザは多くの類似点を持ち、両者とも接触感染によって発症し、呼吸器系に種々の影響を及ぼすとあり、両者ともに発熱、倦怠感、咳を引き起こし、深刻な呼吸器疾患を発症すると肺炎を引き起こし、最悪の場合は死に至るとある。

 

従って、武漢税関が米国で毎年のように流行しているインフルエンザを新型コロナウイルス感染症に見立てて、インフルエンザの中国への流入を武漢天河国際空港で食い止めようと感染予防処置の予行演習を行ったという解釈は成り立つかもしれない。