昨年9月すでに武漢で「新型コロナウイルス」防疫演習が行われていた

外交部報道官「米軍拡散」説の背景か
北村 豊 プロフィール

唐突な「新型冠状病毒感染」対策

さて、武漢軍人運動会は2019年10月18日から10日間にわたって開催されたが、10月18日の開幕式より3週間以上前の9月26日付の地元紙「湖北日報」は「軍人運動会用の航空検問所で専用通路が検査をパス」と題する記事を掲載した。この記事は同じく9月26日に湖北省人民政府のウェブサイトにも転載されたが、その概要は以下の通りになる。

(1)武漢市にある「武漢天河国際機場(武漢天河国際空港)」は武漢軍人運動会に参加する外国選手やその関係者の入国管理や携行品や諸機材の通関を順調に行うために検査を兼ねた予行演習を9月18日実施した。それから1週間後の9月25日に空港税関の関係責任者が表明したところによれば、通関工程の合理化によって通関効率は明らかに上昇しており、競馬や落下傘などの試合機材はすでに輸入通関を終えているという。
(2)9月18日に武漢天河国際空港で検査を兼ねた予行演習を実施したのは武漢税関の「連合軍運動会執行委員会」であり、行った予行演習は『国境の安全を守り、軍人運動会の無事を保障する』をテーマとする応急処置訓練であった。実戦形式で行われた訓練は、旅客通路で基準値以上の放射性物質が発見された際の処置および空港検問通路で「新型冠状病毒(新型コロナウイルス)の感染」が発見された際の処置であり、流行病学調査、医学的ローラー作戦、臨時検疫区域の設置、隔離収容、病人の移送や衛生的処理など多岐にわたる訓練を行った。
(3)間も無く開催される軍人運動会には多数の国から運動選手が競技に参加し、多数の観衆がこれを迎えることになる。同時に、落下傘、警察犬、軍用ピストルなどの特殊な物品や機材が輸入通関されることになる。武漢税関長である楊傑の紹介によれば、訓練を通じて仕事の手順を整理し、遺漏なきよう努めており、軍人運動会の人員や物資を迅速かつ安全に輸出入通関を行えるようサービスの向上を図っている。

この2019年9月26日付「湖北日報」が報じた記事には「新型冠状病毒(新型コロナウイルス)の感染」という言葉が唐突に使われているが、この記事を読んだ新聞の読者やネットに転載された記事を読んだネットユーザーは「新型コロナウイルス」という言葉を理解していたのだろうか。

恐らく、この記事を書いた湖北日報の記者は武漢税関の取材源から聴取したままを書いたもので、「新型コロナウイルス」が何かを全く理解していなかったと思われる。

一方、趙立堅による「新型コロナウイルスを武漢へ持ち込んだのは米国軍かもしれない」という発言は、世界中に報じられて中国に対する激しい反発を招く結果となった。不思議なことに、その直後に上記の「湖北日報」記事は密かに削除された模様である。

 

ただし、元記事は削除されても、ネット上には多数の転載記事が残り、完全な削除は難しい。当該記事が突然削除された理由として考えられるのは、中国における「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」の発症が報告された2019年12月末以前に「新型コロナウイルスの感染」に対する処置訓練を行っていたというあらぬ疑惑を避けようとした可能性である。

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