7月 9日 日本初の肝臓のドミノ移植(1999年)

科学 今日はこんな日

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"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

1999年の今日、京都大学のチームによって、日本で初めてとなる肝臓のドミノ移植が実施されました。

肝臓 illustration by iStock

一般に移植では、ある患者の臓器を摘出し、ドナーから提供された健康な臓器をその患者に移植します。しかし、摘出した臓器がより重症な患者にとって有用であるとき、その臓器をさらに移植することがあります。これがドミノ移植です。ドミノ移植は、基本的に最も再生力の高い臓器である肝臓以外では実施されません。

世界で初めてのドミノ移植は、ポルトガルで1995年に実行されました。このときの患者は、「遺伝性ATTRアミロイドーシス」と呼ばれる病気にかかっていました。この病気は、今でも肝移植より有効な治療法が見つかっていません。しかも、肝移植をしなければ平均10年で死に至るという病気なのです。

遺伝性ATTRアミロイドーシスの原因となるTTRタンパク質(4量体)

日本では、その頃肝移植自体の前例がありませんでした。1998年にようやく島根医科大がはじめて肝移植に踏み切っています。しかし、その際も倫理的な観点からの批判は少なくありませんでした。

 

そしてその翌年、京都大学によって日本ではじめてドミノ移植が執刀されたのです。この時には、まず50代の患者にその兄から肝臓の一部が移植されました。さらに、取り除かれた肝臓を二つに分割し、二人の女性に移植したのです。この「ドミノ分割肝移植」という手法は、世界でも前例がありませんでした。

これ以降日本での肝移植の技術は大きく進歩し、翌年には京都大学と慶應大学の連携により離れた二病院での移植に成功します。2014年には、難易度が高いとされていた小児間のドミノ手術にも成功しました。

その一方で、2018年には遺伝性ATTRアミロイドーシスの原因となるTTR(トランスサイレチン)遺伝子の異常を解消する製剤が欧米で承認されました。現在は肝移植以外の方法がないと考えられている病気も、投薬治療への研究が続いているのです。