今見てきた通り、私たちは脳内にネットワークを築いて、それを参照することで世界と向き合っています。言うまでもなく、このネットワークは世界そのものではありません。あくまで、人間が世界と向き合うことで作り上げた「世界の解釈」です。「世界観」と言っても良いでしょう。
同じ型のネットワークが多くの人と共有されることによって、人々は同じ基準で世界を認識して、同じ基準で会話を交わすことができるようになります。言葉によって多くの人の間で共有されたネットワークは、人類の世界観そのものです。
これは同時に、ネットワークが変化すれば私たちの世界はその姿を変えることを意味しています。
天動説と地動説は典型例でしょう。今も昔も、私たちが見上げる夜空の星は同じ動きをしていますが、この星の動きを、地球が止まっていて星たちが動いているのだと説明したときと、地球の自転と公転によって星たちの動きが生み出されるのだと説明したときとでは、思い描く宇宙の姿はまったく違ったものになります。
ここまで劇的でないにしても、新しい物事を学ぶことで世界の見え方が変わった経験をしたことがある方は多いはずです。これは学びの醍醐味です。私たちは、学び続けることによって、常に変化し続ける世界に暮らしているのです。これは私の持論でもありますが、学び続けることによって、世界はどんどん美しくなります。
そして、人類は今、天動説から地動説に移り変わったときと同じくらい急激な世界観の変遷の中にいる、と言ったら驚くでしょうか? 古典の世界観から量子の世界観への変遷です。