今も新種が見つかり続けているのに…注目されない「影薄恐竜」とは?

今年には巨大化石群発見のきっかけに
安田 峰俊 プロフィール

楊とキャンプのコンビは過去にラウダーバックが化石を見つけた地点を特定することはできなかったものの、調査を通じて5ヵ所の化石発掘ポイントを発見した。

そのうちのひとつが、栄県の中心部から東に1キロほど離れた西瓜(スイカ)山の山中だ。彼らは西瓜山近くの小さな丘の上の砂質泥岩からひとかけらの化石を発見。その場所を試しに掘ってみたところ、1.5メートルもの肋骨らしき化石があらわれる。

 

発掘におおむね12日間ほどを費やして、頭部と尾を除くほとんどの骨が見つかった。肋骨や脊椎、頚椎、仙骨、左上腕骨などが発見され、保存状態も良好だったのだ。

楊鍾健が論文中で紹介した、発掘当時のオメイサウルス・ジュンシエンシスの化石の状況

仲間は多く見つかっている

この竜脚類の化石は北京の楊の研究室へ送られ、日中戦争下の1939年、彼がオメイサウルス・ジュンシエンシス(O. junghsiensis:栄県峨眉龍)として報告した。これがオメイサウルスの模式種である。

中国・雲南省の昆明市博物館にある、オメイサウルスの骨格標本 Photo by flickr

その後、オメイサウルスの仲間とされる恐竜は四川省や重慶市(1997年までは四川省に所属)から数多く見つかるようになった。

その多くは文化大革命後の1970~80年代に化石が見つかり、新種報告がなされている。楊自身が報告したものとしては、1958年に重慶市長寿県(現在は長寿区)の水力発電用ダム工事現場で発見されたオメイサウルス・チャンショウエンシス(長寿峨眉龍:O. changshouensis)がある。

楊鍾健 Photo by Public Domain

もっとも、一部の種名についてはその後に疑問名ではないかと議論になったり、近年になってからオメイサウルスではなくマメンチサウルスの仲間ではないかとする指摘がなされたりと、まだまだ中国の恐竜研究が黎明期だった時期の発見であるだけに混乱も少なくないようである。

2020年にも新種報告

オメイサウルスの仲間は近年になっても化石が見つかっている。なかでも最も新しいのは、2020年2月に報告された、全長16メートルほどと推定されるオメイサウルス・プシエンニ(普賢峨眉龍:O. puxiani)だ。

見つかったのは重慶市雲陽県普安郷の山のなかであり、周囲一帯は後の研究によって、世界的な規模の恐竜化石群であることが判明した。