濃厚接触がなければ芸術は成り立たない〜ポストコロナ期の芸術の使命

ウイルスと共生する日常のなかで
黒瀬 陽平, 宇川 直宏 プロフィール

黒瀬:オンライン展覧会とかデジタルアーカイブの充実といった方向で、オンラインでコロナ禍をのりこえられると主張している人たちは、「オナニーでいいじゃん」と急に言いはじめているってことですよね。「セックスなくても楽しくやれるよね」と。

宇川:そのとおり。でもその考えも極端すぎると明確に否定しなきゃいけない。つまり第一の現場へと誘惑しなきゃいけない。

今、ぼくのもとにはラインやDMや電話が最近ガンガン押し寄せてくるんですよ。「宇川さん、オナニー(ストリーミング)のしかた教えてください」って(笑)。

〔PHOTO〕iStock
 

黒瀬:でもそれって、宇川さんがオナニーしかしてない人だと思われていませんか?

宇川:思われている証拠でしょう(笑)。でも確かにオナニーの素晴らしさはこれまで僕が地道に世に布教してきたわけだし、10年かかって世界がやっと気づいてくれたかと感慨深い。なので皆にこれまで積み上げてきたノウハウを教えてあげています。

しかし、これまで僕らDOMMUNEが取り組んできた最も重要な修練を見落としていませんか? と世に問いたい。DOMMUNEのこのスタジオは世界中のDJやミュージシャンが、日本一音がいいと、サウンドシステムの素晴らしさを絶賛してくれている現場です。PARCO9Fに越してきてからもアコーステックリバイブの全面協力で異次元のクオリティに到達しています。

つまり濃厚なセックスの豊かさをオナニー以上に堪能できる装置とインスタレーションを僕は同時に作り上げてきた。これぞ芸術でいうアウラの探求であり、生身の儀式の復権であって、つまり僕らはオナニー以上に本番の豊かさとそれを覗き見る快楽も並行で世界に伝え広めてきたという自負があります。

DOMMUNEは常にコミュニケーションにおけるこの3つのレイヤーのことを意識して10年間ストリーミングをしてきたのだけど、昨今のコロナ禍においては、そのオナニー部分の豊かさだけが際立って着目されている。