教員も驚いた…今の大学生が「マルクスに共感」するようになっている

彼らはこの思想家に何を見ているのか
田上 孝一 プロフィール

ワーキング・プアというのは法定のフルタイムで働いてもなお、余りの低賃金のため、家庭を持って子供を育むことができないような労働者である。これはマルクスの時代では考えられないことだった。

マルクスの時代では労働者家庭の子供は次世代の労働力予備軍として、絶えざる供給が前提される存在だった。「貧乏人の子沢山」が当時の労働者家庭の一般像であり、資本が求める労働者家族のあり方でもあった。

しかしこれは裏を返せば、貧乏であっても子供が沢山持てるということである。最低限の暮らししかできなくても、なお多数の子供を養えるのが、在りし日の労働者だったわけである。

ところがワーキングプアはもはや子供自体がどうあっても持てないほど貧しいのである。自分一人が最低限の生活をするのに精一杯な人々なのである。これは資本にとっても容易ならざる事態である。何しろ次世代の労働力が再生産されなければ、資本主義以前に社会そのものが成り立たなくなってしまうからである。

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「疎外」が学生の心に響く

このような行き詰まり状況の中にあってこそ、通常は当然の前提とされる資本主義的な経済秩序それ自体の存続に疑義を投げかけるマルクスのラディカリズムが、素直な学生の心に響くという面が強いのではないか。

哲学は物事の根本を考える学問だし、ヘーゲルも強調するように、既存の常識を疑い、常識に囚われることなく真実を追究すべき学問でもある。とは言いながら、現行の大学カリキュラムで、こうした哲学本来の理念をストレートに遂行している科目というのは少ないのではないかと思う。

これに対してマルクスの哲学はその本質上、現行の常識を真っ向から問い質さずにはおかない。その焦点となり、学生に解説したときの反応も大きいのが、マルクス哲学の中心にある「疎外された労働」の問題である。