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教員も驚いた…今の大学生が「マルクスに共感」するようになっている

彼らはこの思想家に何を見ているのか

マルクスが「歴史の遺物」だった時代

かつて小耳に挟んだ話であるが、ある日本人イスラム教徒がいて、その人は2001年9月11日の、あのビルアタックを機に入信することになったそうである。

当時イスラム教に対する偏見は凄まじく、アジテーターだったオサマ・ビンラディンは悪魔の名に等しいものとして、日本国内でも受け止められていた。そのようなご時勢だからこそ逆にその人は、イスラム教というのが本当にそんなに酷い宗教なのかと興味を持ったそうである。

結果ミイラ取りがミイラになって、入信することになった。勿論テロリズムに賛成したからではなく、その教えの実際が世間で広められていたイメージと余りにもかけ離れたことに驚きつつ、イスラム教の教えに賛同したのだった。

この話を聞くと、どうしても他人事とは思えない。それは私とマルクスとの関係と重なるところがあるからである。

マルクス〔PHOTO〕Gettyimages
 

私が大学を卒業し、哲学研究を志して大学院に入学したのは1989年のことである。言うまでもなくベルリンの壁が崩壊した年であり、その二年後にマルクスと常に結び付けられていたソビエト連邦が崩壊したのである。まさにマルクスの名は地に落ち、マルクス及びマルクス主義は歴史の遺物として屑籠に放り投げられんとするご時勢だったわけである。

そんな時に、卒業した大学の院ではマルクスが本格的に研究できないからと、別の大学に進学した私は、客観的には相当偏屈な人物ということになるだろう。しかも日本ではマルクスは通常、経済学の枠で研究されているので、哲学、特に倫理学研究をすることにこだわってあくまで哲学専攻枠でマルクスを主要な研究対象に選んだ私は、今思えば全くの向こう見ずだった。

しかしそんな自殺行為のような人生選択をしたにもかかわらず、初志貫徹でひたむきにマルクス研究に邁進し、大学院に5年在籍した後の27歳から、大学で哲学を教えることになった。