定期接種なの? 
お知らせが届かないことが決定打

キーポイントは、公的機関が接種勧奨を止めたかどうか

「HPVワクチンの積極的勧奨を止めると決めたのは唯一、日本だけ。現在も定期接種であり、対象年齢の女子は無料で接種することが可能ですが、厚生労働省による積極的な呼びかけはありません。そして自治体の多くがそれに習い、家庭にお知らせを出しているのは一部の自治体だけという状況です。

ワクチン忌避研究の専門家でロンドン大学衛生熱帯医学大学院のハイディ・ラーソンさんは、論文で『メディアで報じられた時点で、科学的データを持ちうる機関である厚生労働省がすぐに反論すべきだった。メディア報道に加えて、国が公でお墨付きを与えてしまったのが接種率の低下に強く影響した』(Clin Infect Dis 64 (2017) 533-534)と書いています。私も同意見で、それが決定打となっていると思います」

厚生労働省の調査(2018年)によると、HPVワクチン接種を差し控えた理由について、7割ぐらいの方が、有効性についてもワクチンの副反応についても、「よく知らない」と回答した結果が出ている。接種対象が12歳~15歳であることを考えると、回答したのは親であることが多いだろう。

つまり、内容はよく知らずとも、無料の定期接種を保証していてもお知らせが来ないから、推奨されてない、定期接種ではないと思われていることが理由の大部分を占めているといえる。その点が、公衆衛生の専門家として、木下さんはとても悔しいのだ。

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日本でHPVワクチンの接種率が極端に低下していることは、公衆衛生の世界の大きな課題です。WHOはなんども警告を出していますし、この問題に取り組んだ学生の私にハーバードの卒業賞が送られるほど、深刻な問題であることを、多くの方に知って欲しいと思っています。

しかもほとんどの方は、よく知らないから打っていない。でも定期接種なので、推奨されるワクチンであることに変わりはありません。実施主体である自治体は、迷うことなく、定期接種のお知らせを出して欲しい。過去の内閣府答弁でも、『厚労省の勧告には法的拘束力はない』『HPVワクチンは定期接種のものである』とされています

海外では、男子への接種を行うところも。米国テキサス州の小児科医にて接種した男の子。photo/Getty Images