本来あるべきでないものがあるのです
2019年9月上旬のこと。名無しの権兵衛の病気を探るために検査入院をしていた時に、主治医の先生から「ちょっとお話があります」とかみさんと別室に呼び出されたことがありました。ちょうど造影剤を入れてMRIを撮った後だったので、病名について何か分かったのかなと思いました。
個室に入ると主治医は真面目な顔で話し始めました。
「これが肺の下から、肝臓、膵臓の断面図になります」
へえ、こんな感じになっているんだなあ、とだけ思いながらその断面図を見ていました。すると主治医の先生はこう続けたのです。
「この肝臓と膵臓の間に、本来あるべきでないものがあるのです」
偶然見つかった腫瘍
「あるべきでないものがある」? どういうことなのか、一瞬わかりませんでした。
「もう一度断面図を観てもらうと、ここからここまで塊があります。これは腫瘍です。それもかなり大きめで10センチ(握り拳大)くらいあります。そこそこ大きい部類です、今まで何か違和感はありませんでしたか?」
違和感は全然ありませんでした。「全然、ありませんでした。こんなに大きければ何か違和感があるはずですよね?」こう答えると、医師は言います。
「いえ、腫瘍には色々なタイプがあって自覚が無い方が多いとも言えます」
ではこの腫瘍がもしかしたら歩けなくなってきた原因なのでしょうか。すぐに「あっ、これが足の違和感の原因ですか?」と尋ねました。しかし、「そう思って調べてみたのですが、今回の検査の原因では無いようです」と言います。さらに医師は衝撃的なことを口にしました。
「確かに今回の事には関連していませんが、今後においては大きな問題と言えます。
4センチ以上の腫瘍があると、どのような病気の治療に関しても弊害になりうるからです」
原因不明の腫瘍があると、何が起こるか分からないため、治療や治験などは受けられない可能性が高いということなのです。つまり、いまは病名を必死に見つけているところだけれど、もし病名が判明しても腫瘍をどうにかしないと前に進めない事が分かったのでした。
しかも、10センチを越えている大きさなので、何が起きても不思議ではない状態だったのです。