〔PHOTO〕gettyimages

俳優・長谷川博己が大河ドラマ『麒麟がくる』主演を獲得するまで

今や日本を代表する俳優、その軌跡

新型コロナウイルスの影響で、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』が休止中だ。

「麒麟のいない時間」の欠落を補うことはできないが、その再開を待ちながら、主人公の明智光秀を演じている「俳優・長谷川博己」の軌跡をたどってみたい。

前回、2010年の『セカンドバージン』にはじまり、『鈴木先生』『雲の階段』『夏目漱石の妻』などを取り上げた。今回は、『麒麟がくる』へと至る後編である。

〔PHOTO〕gettyimages
 

『獄門島』で新たな「金田一耕助」を創出

2016年11月19日、NHK・BSプレミアムで、横溝正史原作『獄門島』が放送された。

横溝作品は、これまで何度も映像化され、何人もの俳優が「探偵・金田一耕助」に扮してきた。昭和20年代の片岡千恵蔵はともかく、市川崑監督作品での石坂浩二の印象が強い。またドラマ版には古谷一行を筆頭に、片岡鶴太郎、上川隆也などが並んでいる。

だが、この『獄門島』で長谷川博己が演じた金田一に驚かされた。これまでとは全く異なる雰囲気だったからだ。石坂や古谷が見せた“飄々とした自由人”とは異なる、暗くて重たい、どこか鬱屈を抱えた青年がそこにいた。

背景には、金田一の凄惨な戦争体験がある。南方の島での絶望的な戦い。膨大な死者。熱病と飢餓。引き揚げ船の中で、金田一は戦友の最期をみとり、彼の故郷である獄門島を訪れる。また事件そのものも、戦争がなかったら起きなかったであろう悲劇だった。

このドラマが目指したのは、戦争と敗戦を重低音とした“原作世界への回帰”であり、“新たな金田一像の創出”だった。長谷川は見事にその重責を果たしたのだ。