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奄美沖の潜水艦潜航…中国はコロナ禍につけこんだのか?

実は10年前から海洋戦略は不変

奄美沖の潜水艦は「中国と推定」

2020年6月18日から20日にかけて、奄美大島沖の接続水域を外国の潜水艦が潜没航行しました。

23日の閣議後記者会見において河野太郎防衛大臣が「中国のものであると推定している」と発表したとおり、これは中国海軍の潜水艦であると考えられています。

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1990年代を境に近代化を進めた中国海軍は、2010年ころにかけて大量の通常動力潜水艦(ディーゼルエンジンとバッテリーによって推進する潜水艦)を就役させてきました。

こうした通常動力潜水艦の主任務は平時の監視と、有事に海峡などで敵の空母や大型水上艦艇を待ち伏せし、襲撃することにあります。広大な海域を制して他国を攻撃するのではなく、強力な敵の海軍力を迎え撃つ、つまり「拒否」することに主眼をおいています。

このように自身の領土や周辺海域に到来する敵を拒否することを「領域拒否」と呼び、潜水艦は巡航ミサイルや長距離攻撃機と並んで領域拒否戦略を実行するための重要なアセットになります。

 

アクセス阻止・エリア拒否戦略

20世紀末から中国人民解放軍の近代化は唯一の超大国である米国の軍事力、とりわけ原子力空母とその艦載攻撃機、護衛する水上艦や潜水艦から発射される巡航ミサイルなどによる攻撃力(「戦力投射」と呼ばれます)をどうしたら相殺できるのか、ということに焦点を当ててきました。

米ランド研究所のレポートによれば、1991年の湾岸戦争における米国の戦力投射能力に代表される軍事的優越性を目の当たりにし、当時の江沢民国家主席は1993年に「ハイ・テクノロジー環境下における局地戦争に対する準備」に力を注ぐよう指示した、といわれています。

こうした中国人民解放軍の取り組みは「アクセス阻止・エリア拒否戦略」(A2/AD戦略)といわれ、典型的な領域拒否戦略であると考えられます。

米軍の有する原子力空母を中心とする大型・高額な兵器体系を自分も保有しようとするのではなく、比較的安価な潜水艦などによる非対称な戦力組成でこれに対抗しよう、というものです。

こうした戦略は中国のオリジナルである、というわけではありません。冷戦後期のソ連も類似の戦略を採用していたとされ、当時それは「海洋要塞戦略」、「海洋拒否戦略」などと呼ばれました。