東京都はコロナ以前から
市民による応急手当実施率も低かった

数ある救急医療の課題の中から中澤さんが目を付けたのは、東京都の心停止傷病者、特に、蘇生の可能性が高いといわれている、倒れるのを目撃した場合で、かつ、心原性(心臓に起因するケース)の心停止傷病者の社会復帰率が全国平均を大きく下回っていることだった。

「東京都は病院も医師の数も多いし、応急手当(心肺蘇生およびAEDによる除細動)講習の修了者や市中のAED設置数も多いにもかかわらず、過去10年間(2007~2016年)のデータを見ると心停止傷病者の社会復帰率は5.9%で47都道府県中41位、全国平均の7.4%と比較してもだいぶ低いことが気になりました。
 
先行研究や公的機関のデータを分析し、社会復帰に関する因子を調査したところ、『救急隊の覚知から現場到着までの所要時間が長い』『覚知から病院収容までの所要時間が長い』『救急隊到着前に一般市民による心肺蘇生が実施されていない割合が低い』ことに相関があることが分かりました」

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最新の2018年のデータでも、東京都で目撃のあった心原性心停止傷病者の社会復帰率は8%であり、3009人中240人にとどまっている。もしも東京都の社会復帰率が全国平均と同じ9.1%だった場合には、社会復帰できた人の数が34人増えることになる。また全国トップの福岡県と同じ17.3%なら、約2倍の281人も多く社会復帰できたことになる。

全国的にみても、心停止者に対して、救急車が到着する前、つまり倒れた直後に心肺蘇生が実施された場合の1か月後の社会復帰率は12.5%で、実施されなかった場合の4.5%と比較して、約2.8倍も高くなる。

心停止者の生存率と社会復帰率を左右するのは、倒れるのを目撃した一般市民による応急手当の有無なのだ。

「2018年のデータでは、、東京都で目撃のあった心原性心停止傷病者に対し、救急車が到着する前に心肺蘇生がされていたのは48%です。社会普及率が全国1位であった福岡県の72%と比較するとかなり低くなっています」