朝鮮労働党幹部が明かした「金与正・南北共同連絡事務所爆破」の真相

文在寅に分からせてやることにした…
近藤 大介 プロフィール

続いて、文在寅政権の「北朝鮮観」が開陳されていく。

「尊敬する国民の皆様、戦争功労者と遺族の皆様、私たちは戦争に反対する。韓国のGDPは北朝鮮の50倍を超え、貿易額は400倍を越える。南北間の体制を巡る競争は、もうずいぶん前に終わったのだ。

私たちの体制を、北朝鮮に強要するつもりはない。われわれは平和を追求し、共に幸せに暮らそうとしている。我々は絶えず平和を通じて、南北共生の道を見いだしていく。統一を語る前に、われわれはまず仲の良い隣人になろうではないか。(中略)

戦争を経験した親の世代と、新たな70年を切り開いていく後世に、平和と繁栄の韓(朝鮮)半島は、必ず成し遂げなければならない責務だ。8000万同胞全員の宿願だ。

世界史で最も悲しい戦争を終わらせるための努力に、北朝鮮も大胆に乗り出すことを願う」

以上である。後半は、韓国人に対してと同時に、北朝鮮側に対するメッセージにもなっている。

北朝鮮からの「最悪のメッセージ」

実際、1953年に朝鮮半島の休戦協定が結ばれた後も、20世紀末の1991年にソ連が崩壊し、世界で冷戦構造が終結した後も、韓国と北朝鮮は、38度線を南北に分けて対峙し続けた。

そんな南北に、和解の道を切り拓いたのは、「太陽政策」(包容政策)を掲げた故・金大中(キム・デジュン)大統領である。北朝鮮に冷たい北風を吹かせるのでなく、暖かい太陽の光を注ぐことで、北朝鮮を国際社会に迎え入れるという考えだ。

金大中大統領は、2000年6月13日から15日まで訪朝して、金正日(キム・ジョンイル)総書記と、歴史的な南北首脳会談を開催。「6・15南北共同宣言」を発表した。金大中大統領はこの年、ノーベル平和賞を受賞している。

それから20周年を迎えた今月15日、「金大中精神」の後継者である文在寅大統領は、南北合同で記念行事を開きたかった。「南北が主導して統一の道を進めていく」というのが、2000年、2007年(廬武鉉・金正日会談)、そして2018年の共同宣言の主旨だからだ。

〔PHOTO〕gettyimages

ところが北朝鮮側は、文在寅政権を無視した。それどころか「南北共同宣言20周年」の翌16日、文在寅・金正恩時代の南北和解の象徴として、2018年10月に開城(ケソン)に設置した南北共同連絡事務所を爆破。「最悪のメッセージ」で応えたのだった。

これによって、文在寅政権は、発足以来3年あまりで最も大きな激震に見舞われた。

北朝鮮との宥和政策を統括する金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一部長官が電撃辞任を発表した。康京和(カン・ギョンファ)外交部長官の交代も囁かれている。統一部長官の後任には、徐薫(ソ・フン)国家情報院長の名が、外交部長官の後任には、趙世暎(チョ・セヨン)外交部第一次官の名が挙がっている。

先週22日には、韓国の脱北者団体「自由北韓連合運動」が、「民族の頭上に核ミサイルを放ち続ける狂人・金正恩を終わらせよう」などと書いたビラ50万枚を、再び北朝鮮側に散布した。だがそれでも、文在寅大統領は25日、忍耐をもって、北朝鮮側に「まず仲の良い隣人になろう」と呼びかけたのだった。

 

それでは、北朝鮮側は現在、何を考え、今後どのような行動に出ようとしているのか?

私は、これまで数十回にわたって行ってきたルートを使って、間接的に朝鮮労働党幹部に話を聞いた。以下、その最新版の一部をお伝えしたい。