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「政府頼みのANA、距離を置くJAL」コロナ危機で生き残るのはどっちだ

対照的な両社の対応…今後の焦点は
町田 徹 プロフィール

救済のカギとなった「8.10ペーパー」

この過程でもう一つ大きな意味を持つのが、「8.10ペーパー」と呼ばれたJALに対する国土交通省の行政指導である。

皮肉なことに、この行政指導は、本来の目的とは正反対の効果を発揮して、JALを救う結果に繋がっているのだ。名前の由来は、この行政指導が2012年8月10日に発出されたことに拠る。

当時、財務的にピカピカの会社に生まれ変わったJALの再上場が1ヵ月後に予定されていた。この行政指導は本来、JALの反転攻勢を恐れた旧ANAや、民主党政権主導の国策再建が気に入らない自民党航空族などの不平と不満を抑えるための措置で、国土交通省航空局がJALの投資や路線の拡大計画を厳しく制限するものだった。

 

対象期間中の4年8ヵ月、JALは行政指導で新規路線の獲得や機材などの投資を制限された。JALはおおいに不満だったが、結果として、この行政指導はJALの固定費の増大を防ぐ歯止めになり、想定はしていなかったが、コロナショックの影響を抑える役目も果たしたのだ。

言い換えれば、ANAをJALの攻勢から守ることが主眼だった「8.10ペーパー」が、意図せずに、JALを救ったのである。

有利子負債の推移を記したグラフをみてほしい。

(※注:「JALの有利子負債の推移」は、2010年3月が同社の破綻に伴う更生手続き中でデータがないため、当該部分は破線で示しています)

破綻の影響で2010年3月期は決算集計をしていないため不連続になっているが、JALの有利子負債残高のピークは2009年3月期の8015億円だ。そして、破綻処理のおかげで、再上場直前の2012年3月期には10分の1以下の572億円に激減した。

政府主導の破綻の後、前述の行政指導もあって、JALは石橋を叩いて渡るケチケチ経営を強いられたので、コロナショックに見舞われた2020年3月期の有利子負債残高も1884億円とライバルの4分の1以下に抑えられていた。10年以上前の国策救済やその後の行政指導がJALにもたらした恩恵は計り知れない。