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「政府頼みのANA、距離を置くJAL」コロナ危機で生き残るのはどっちだ

対照的な両社の対応…今後の焦点は
町田 徹 プロフィール

破綻処理のおかげで優良会社に

ところが、政府や証券当局はJALの破綻処理に当たって、この「クレジット・メモ」を巡る会計処理を不問に付した。代わりに、政府として巨額の資本注入を行ったばかりか、貸し手責任という論拠でメインバンクに債権放棄をさせたうえ、株主の株主責任も問い株券を紙切れにした。

その結果、JALは、「クレジット・メモ」の不適切な会計処理によって巨大な不良債権と化していた機材の整理を一括して進めることができたのだ。

もう一度、保有機材の推移のグラフをみてほしい。破綻前の2009年3月期に279機あったJALの機材は2012年3月期に215機と2割以上も減った。

この機材減らしは、老朽化して燃費が悪い機材だけでなく、多過ぎて交換用のエンジンや部品の保有負担がかさんでいた機種の整理や、「クレジット・メモ」の不適切会計処理の積み重ねで償却負担が膨張していた機材の処分を可能にしたのだった。

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さらに、JALは、国策救済による巨額の資本注入や債権カットによって有利子負債の元利払い負担からも解放された。このことは今日に至るまで、JALの機材更新戦略を容易にしている。JALは、2012年3月末の215機から、2020年3月末までの間に26機を新たに手当てしたが、過度に借入金を増やすことなく、自前の利益の範囲内で機材を手に入れることができたのだ。

注目してほしいのは、リースによる調達をピーク時(2009年3月末)の113機から2020年3月末の24機へと、実に4分の1以下に減らすという“離れ業”を達成した点である。

機材を自前の利益の範囲内で普通に購入すれば、負担は適切な償却負担だけでキャッシュの流出は伴わない。ところが、リースの場合は、実際に運航しようがしまいが、毎年決められたリース料を支払う必要があり、固定費として重くのしかかるのだ。

つまり、JALは破綻処理という国策のおかげで、固定費負担の極めて小さい航空会社に生まれ変わった。財務体質に着目すると、大手航空会社の中では世界1、2位の座を争う優良会社に変身を遂げ、そのポジションを維持して来た。