偏差値トップ校から、年収100万の「皿洗い」に転落した青年の悲劇

勉強以外の道を誰も教えてくれなかった…
宮本 さおり プロフィール

賢い子は発達障害が見落とされがち

田村さんに甘さがないとは言わない。だが、偏差値上位の大学受験ばかりを進める学校の教師に対して、違う軸での見方を提供できる家族や寄り添う大人がいたら、田村青年の現在は違うものだったかもしれない。

文科省の調査によると、発達障害のある児童生徒数は4万1986人(平成27年5月1日時点)。ここ10年でその数は6倍以上に膨れ上がっている。この数字は医師による診断の結果ではなく、学校の教師による見立ての数字ということはあるものの、田村さんのように生きづらさを抱える子どもは私たちの想像以上に多くいる。

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思春期青年期の人格発達と心理療法が専門で、臨床心理士として難関国立大学や私立大学などでも長年学生相談の経験のある、ルーテル学院大学の石川与志也准教授は次のように話す。

「私たちは多かれ少なかれ、みんななにかしらの偏りを持ちながら社会生活をしています。発達障害をもつ方の場合、その偏りが社会生活を妨げることになりやすいですが、知的能力で補われ、発達障害をもっていることを周囲に認識されない人もいます。

自分の能力が発揮でき、自分のペースで生活できていれば病院へ行って診断する必要もありませんから、診断されずに大人になる方もいます。発達障害によるものであれ、他の心理的要因によるものであれ人とのコミュニケーションの難しさを本人が感じていても、例えば、成績がいいとか、スポーツの能力がものすごく高いなど、パフォーマンスとして結果が出るものがあると、大人はそこに目が行きがちですが、本当は、その子の体験がどこにあるのかを見ることが大事だと思います。

今回の田村さんのように、体を壊してしまうなど本人に大きな負荷がかかることもあるからです。進む道を考えるのは一人では難しいことが多いです。大人が一緒になって“今できることは何か”を考え、その人に合ったものを本人と共に考えていくのが理想です。

親も子も、偏差値に踊らされて、プレッシャーの中にいることもあります。その場合は親にも子にも支援が必要になると思います。専門家とうまく繋がっていただきたいです」