工夫の必要なし?『エール』はなぜ”無策”で再放送を続けるのか

朝ドラのおごりかもしれない
木村 隆志 プロフィール

制作サイドの思いや事情ありきの姿勢

必死な民放の姿勢を見れば見るほど、朝ドラのスタンスが「ウチは特別」というおごりに見えてしまうのは、再放送に対するスタンスだけではない。

“視聴者ファースト”とは思えない/photo by iStock

前作『スカーレット』と今作『エール』は、2作連続で「放送中のスピンオフ」という異例の試みが見られた。ともにその評判は賛否両論だが、そもそもスピンオフは本編を休んでまで放送するものではなく、本編とは別の時間帯か、本編終了後に放送するファンサービス。

2作連続で「放送中のスピンオフ」にこだわっているのは視聴者の希望というより、制作サイドの「これをやりたい」という思いや、働き方改革などの事情によるところが大きいのだろう。

もし本気でファンサービスを考えているのなら、視聴者が楽しみにしている本編の放送を休まず、スピンオフは別の時間帯に放送するか、ネット配信を選ぶはずであり、やはり“視聴者ファースト”のスタンスとは言えない。つまり、「視聴者より朝ドラ制作サイドの思いや事情ありき」に見えてしまうのだ。

そんな「制作サイドの思いや事情ありき」という姿勢は、今年3月にスタートした同時配信・見逃し配信サービス「NHKプラス」の強引なスタートにも当てはまる。「NHKプラス」はTVerとは別のアプリであるなど視聴者の使い勝手がよくない上に、民放各局を置き去りにして同時配信をはじめてしまうなど「民業圧迫」の声が消えない。

 

さらに6月26日、東京地裁で「NHKが受信できないテレビに契約義務はない」という判決が出された。その夜ツイッターには、「イラネッチケー」というフィルタ機器の名称と、「ついにNHKが負けた」「押し売り反対」「高裁はNHK寄りだからまだ安心できない」などのさまざまな声が錯綜。

ただ、受信料制度に関しては批判的な声が大半を占めていて、「好きなときに好きなものを見る」のが当たり前のオンデマンド社会では当然なのかもしれない。

そんな逆風があるからこそNHKは番組の充実で受信料の意義を示したいところなのだが、その筆頭であるはずの朝ドラは再放送にも力を入れたほうがよかったのではないか。