工夫の必要なし?『エール』はなぜ”無策”で再放送を続けるのか

朝ドラのおごりかもしれない
木村 隆志 プロフィール

大河ドラマは必死なのに

朝ドラがこれほど無策の再放送を強気で行えるのは、やはり2010年代に築いてきた“朝ドラブランド”への自信だろう。

民放各局の連ドラが「2桁視聴率を獲得するのがやっと」という状況の中、常に20%超を叩き出し続けてきたのだから自信を持つのは当然と言える。

あるいは、20%超をキープするために、かつてのような無名の新人ではなく、広瀬すず、戸田恵梨香、窪田正孝など実績十分の俳優を主演に据えてきたのも、また事実だ。

さらに、「助演で有村架純、高畑充希、土屋太鳳、吉岡里帆らをブレイクさせて主演女優に育てた」という実績も、朝ドラに関わる人々の自信につながっている。ちなみに次作の『おちょやん』では杉咲花、次々作の『おかえりモネ』では清原果耶が朝ドラ助演でのブレイクを経て主演としての凱旋が決定済。

次期朝ドラヒロインが決定している杉咲花/photo by gettyimages

一方、民放のドラマプロデューサーたちは、朝ドラの主演も助演も自局の作品に大量キャスティングしているだけに、NHKとしては「ドラマ業界の俳優供給源になっている」という手ごたえがあるはずだ。

視聴率でもキャスティングの面でも、朝ドラは民放より優位な立場にあり、それは視聴率低下に悩む大河ドラマにも当てはまる。だから同じコロナ禍による再放送への対応にも、「大河ドラマは必死で、朝ドラは無策」というコントラストが生まれたのだろう。朝ドラは2010年代に一人勝ちの状態が続いたことで、おごりが生まれているのではないか。

しかし、朝ドラは高視聴率を獲得し、多くのブレイク俳優を生み出している反面、社会現象になった作品は『あまちゃん』くらいに留まっている。その間、民放は『家政婦のミタ』(日本テレビ系)、『半沢直樹』(TBS系)、『逃げるは恥だが役に立つ』などが社会現象となり、昨年も異例の2クールミステリー『あなたの番です』(日本テレビ系)が考察合戦で大盛り上がりだった。

 

「毎朝放送されている15分の帯ドラマと、週1回放送される1時間のドラマを比べるのはフェアではない」という声もあるだろうが、だからといって「再放送が無策でいい」という理由にはならない。むしろ視聴者の受信料で制作している番組であり、最も見られているからこそ、民放のドラマ以上にファンサービスをすべきように見える。