2度の流産も経験

好美さんは34歳で結婚してすぐに自然妊娠したがこの3人のほかにも二度の流産を体験するなど、楓季くん以外の妊娠はいつも波乱万丈だった。あまりにも大変な妊娠ばかり経験したので、夫の貴彦さんは「楓季が、珍しい子のように感じる」という。

ダウン症は基本的に偶発的なもので、年齢以外になりやすさを左右するファクターはないと考えられている。両親いずれかの21番染色体に「転座(染色体の一部が他の染色体と入れ替わっている)」がある場合はダウン症の子どもが生まれる率がかなり高いが、それは稀なことで、樋口さんの場合、検査をしても転座は見つからなかった。

好美さんは、入籍して「早く子どもがほしいね」と話して避妊をやめたらすぐに第一子を授かった。
それは妊娠11週の時、近所にある小さな個人開業医のクリニックで超音波検査を受けた時のことだった。医師の動きが止まり、同じ場所をずっと見ている。どうしたのだろう、と思っていたら「NT(nuchal translucency 後頚部浮腫)と呼ばれる首の後ろのむくみが厚く、年齢と掛け合わせた表で見ると、染色体異常のある可能性が8分の1ある」と言われた。

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予備知識がなかった好美さんは意味がよくわからなかったが、医師がただならぬ雰囲気を醸し出しているので、だんだんに「これは深刻なことだ」ということはわかってきた。

「そのうち『今から、旦那さん、ここに来られる?』と先生が言い出して、職場にいる夫に電話をした時には、もう、気が動転していました」

夫が来て再び詳しい説明を一緒に聞き、医師が「羊水検査を受けた方がいい」と言っているように聞こえたので、その場で検査の予約をして帰宅した。
(私、妊娠したばかりだよね? 妊娠してすぐにこんな大変な関門があるなんて……)
好美さんは夢でも見ているようだった。 

樋口さんの妊娠ダイアリー 撮影/河合蘭

好美さんが、羊水検査ができたのは妊娠16週。5週間も中途半端な状況で待っていたことになる。そして、結果が出た時には、もう妊娠19週になっていた。しっかりとした胎動も感じていた。羊水検査を受けて、検査結果を待っている間に、胎動が始まっていたのだ。