香港・国家安全法が「中国の没落」と「日本の復活」をもたらす可能性

一国二制度の終焉が意味すること
髙橋 洋一 プロフィール

自由な政治がなければ、自由な経済もない

もちろん、香港の国際金融センターとしての魅力は、自由な金融取引ができなければ維持できない。もはや、金融センターとしての香港の将来はないだろう。

特に香港ドルについてはドルペッグされており、これが香港の金融インフラを支えている。米国がドル決済で国際金融機関に制限をかければ、香港の金融経済はまったく機能しなくなり、ひとたまりもなく没落する。米国はドルという世界最強通貨をもっているので、その気になれば香港の生殺与奪を握っているともいえる。

中国にとって、香港を失うのは経済的な打撃である。国際金融センターとして上海が伸びてきているので、香港の代替ができるのではないかという意見もあるが、筆者は否定的だ。

というのは、そもそも国際金融センターとして不可欠な「自由な資本移動」が、中国では不可能だからだ。

 

これをきちんと理解するためには、まず国際金融の知識である「国際金融のトリレンマ」についての理解が必要だ。ざっくりいうと、(1)自由な資本移動、(2)固定相場制、(3)独立した金融政策のすべてを同時に実行することはできず、このうち二つしか選べないというものである。

このため、先進国の経済は二つのタイプに分かれる。一つは日本や米国のような変動相場制である。(1)の自由な資本移動は必須なので、(2)の固定相場制をとるか(3)の独立した金融政策をとるかの選択になるが、ここで金融政策を選択し、固定相場制を放棄している。

もう一つはユーロ圏のように、域内は固定相場制、域外に対しては変動相場制を取るというものだ。(1)の自由な資本移動は必要だが、域内では(2)の固定相場制のメリットを生かし、かわりに独立した金融政策を放棄する。もっとも、域外に対しては変動相場制なので、域内を一つの国と思えばやはり変動相場制ともいえる。