韓国が激怒する「ボルトン回顧録」文在寅政権の反論が無理筋な理由

暴露された「米朝対話の裏の思惑」
牧野 愛博 プロフィール

実際、回顧録にもあるように、金正恩氏は19年2月にハノイで行われた米朝首脳会談で、寧辺核施設の廃棄と引き換えに制裁の一部緩和を要求したが、結局物別れに終わった。

同筋は「金正恩氏にしてみれば、韓国の助言通りにしたのに、うまくいかなかったという不信感が残った」と語る。回顧録では、北朝鮮の非核化を巡る米韓のやり取りも紹介されており、北朝鮮が「自分たちへの説明と米国に対する説明が食い違っている」と文句を言い出す可能性もある。

そして二番目の理由は、南北融和路線という文在寅政権の最重要政策の崩壊への懸念だ。

ボルトン氏の回顧録の指摘をそのまま認めれば、南北融和路線は政治的打算の結果に過ぎず、「朝鮮半島に平和を回復した」という文在寅政権の主張が幻想だと認めることにつながりかねない。

 

新型コロナウイルス問題もあり、韓国の経済状況は芳しくない。文在寅政権が力を入れてきた雇用政策は失敗に終わる可能性が高く、もう一つの柱である南北融和路線まで崩壊すれば、政権のアイデンティティーが失われてしまう。

その危機感が、回顧録への怒りを北朝鮮に向けず、ボルトン氏個人に振り向ける結果を招いている。