韓国が激怒する「ボルトン回顧録」文在寅政権の反論が無理筋な理由

暴露された「米朝対話の裏の思惑」
牧野 愛博 プロフィール

なぜ韓国は北朝鮮を非難しないのか

もちろん、外交の秘密を暴露したボルトン氏を批判する声は米政府内にもある。「一方的に発表することは信義にもとる」という鄭室長の指摘は正しい。米朝首脳会談をいい加減な政治的動機で推進した最大の責任が、トランプ米大統領にあることも事実だ。

ただ、そのトランプ氏に対して、あくまで北朝鮮非核化の重要性を説いた日本の姿勢と比べると、韓国は南北対話の優先という文在寅政権の思惑を背景に、政治的功名心にはやるトランプ氏をあおった責任がある。

その点、「回顧録は事実の相当な部分をゆがめた」という鄭室長の主張は相当苦しい。韓国政府はこの主張を裏付ける具体的な反証も示していない。また、本来であれば、非核化の約束を履行しない北朝鮮を真っ先に非難すべきだろう。

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正しい事を指摘されて、なぜ韓国政府は激怒するのか。それには、二つの理由がある。

一つは回顧録によって、北朝鮮の韓国に対する不信が更に強まるのではないかという懸念だ。

韓国と北朝鮮は、18年9月の南北首脳会談で発表した共同宣言で「北朝鮮は、米国が相応の措置を取れば北西部寧辺の核施設の廃棄など追加措置を取る用意があると表明した」とした。南北関係筋によれば、この表明の背景には「寧辺(ニョンビョン)核施設を廃棄すれば、米国は制裁の一部解除などに踏み切るだろう」という韓国政府から北朝鮮へのアドバイスがあったという。