韓国が激怒する「ボルトン回顧録」文在寅政権の反論が無理筋な理由

暴露された「米朝対話の裏の思惑」
牧野 愛博 プロフィール

米朝首脳会談「韓国主導」の内幕

ボルトン氏の回顧録は、政治的な功名心を優先する余り、北朝鮮の非核化を軽視することになった関係国のやり取りを赤裸々に紹介している。

回顧録によれば、鄭室長は2018年3月、平壌で金正恩朝鮮労働党委員長と会い、続いてワシントンを訪れてトランプ米大統領と面会した。このときトランプ氏は、鄭氏から金正恩氏の招待状を受け取り、衝動的に米朝首脳会談の開催を決めた。

しかし鄭室長は後に、自分が正恩氏にトランプ氏を招待するよう勧めた事実を、米側に示唆したという。ボルトン氏は回顧録で、「すべての外交的な愚行は、韓国政府が作り出した。米朝の戦略というよりは、韓国の統一戦略と関係があった」と指摘した。

鄭義溶氏(左)と金正恩氏(Photo by gettyimages)
 

当時、筆者はソウルで取材していたが、ボルトン氏の指摘は正しい。

鄭氏は、18年3月4日、金正恩氏と面会したが、このとき正恩氏が米朝対話に言及すると、すかさず鄭氏は「トランプ大統領と会う考えはないのか」と突っ込み、正恩氏の「機会があればそれも良いでしょう」という回答を引き出した。

鄭氏がその直後の3月8日、トランプ氏に金正恩氏の考えを伝えたところ、トランプ氏は即興で「4月に米西海岸で会おう」と言い出したという。

鄭氏はその際、トランプ氏に「金正恩氏の非核化の意思は間違いない」とも説明している。だが、鄭氏が金正恩氏に会ってからトランプ氏に会うまでの数日間、「非核化」が核兵器を指すのか、核物質も含むのか、あるいは、非核化にはどんな条件がつくのかを詳細に分析検討した形跡はうかがえない。

米朝会談を韓国が主導した証拠に、このトランプ氏と鄭義溶氏の面会の結果は、米政府ではなく、鄭氏ら韓国の訪米団がホワイトハウスの中庭で発表した。これについては当時から、韓国政府内で「米朝会談が失敗したら、韓国政府に責任を取らせるという意味ではないか」という声が出ていた。