コロナの届け出「ファックスで保健所に提出」がやめられない理由

この機会に明らかにすべき本当の問題
奥村 貴史 プロフィール

では、医師が直接入力するのを避けて、医師の書類仕事を支援する医師事務作業補助者(医療クラーク)に入力してもらうのはどうか。そもそもの入力内容を医療クラークが単独で入力できるケースがあるかもしれないが、そうでない場合、医者は患者情報を紙にメモしたうえで渡せば良いのだろうか。これでは、医師がいちいち紙に記入してファックスで送付する既存の発生届と手間は変わらない。

この問題の解決策は、施設毎に最適解が異なる。電子カルテに、発生届の帳票印刷機能を追加することが容易にできる施設にとっては、印刷した発生届をファックスする方に即効性があるだろう。ウェブ報告が有用なケースがあることは否定しないが、全ての医療機関の負担を下げうる解決策とは言えない。

〔PHOTO〕iStock
 

保健所側の問題

さて、病院などの検査機関から保健所に届けが提出されると、保健所はその情報を自治体本庁や国と共有していくことになる。この保健所から国へと情報共有がなされる過程も問題となる。

そもそも、感染症対策には地方自治体に相応の裁量があり、各都道府県や政令指定都市は独自の感染症対応体制を有している。

前述の通り保健所は、入手した検体(分かりやすく言えば、患者から採取した鼻水など)を検査施設に送り、検査結果を行政機関内部で情報共有している。その仕組みは、新型コロナウイルス感染症のためだけのものでなく、さまざまな感染症への対策のために日常的に運用されている。

仮にもし、ここに新たな新型コロナ用のシステムが導入されるとどうなるか。たとえ病院からの報告がデジタル化しても、すでに業務効率化のため独自の感染症情報システムを導入している大規模自治体においては、自治体側システムと新型コロナ用システムとが相互接続されていない限り、保健所側で入力負担が生じることになる。

独自の情報システムを有していない自治体であっても、他の日常的な感染症対応フローと新型コロナのフロー、2つの業務フローが並立してしまう。これは、パンデミック対応に追われる保健所にとって余分な負担となる。

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