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コロナの届け出「ファックスで保健所に提出」がやめられない理由

この機会に明らかにすべき本当の問題

国民を驚かせた「いまだにファックス」

「令和の時代にファックスだって…?」

新型コロナウイルス感染症の患者を診察した際、医療機関は保健所に患者の発生を届け出なければならない。医師は、その届けを「手書きの書類をファックスする」という方法で提出していると言えば、驚かれる方が多いかもしれない。

実際、4月末にはその煩雑さを嘆く医師の声が大臣の目に留まり、ウェブ化が進められる運びとなったとの海外報道までなされた。たしかに、このネット時代に書類をファックスするという業界の後進性には、多くの方が驚かれるだろう。

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だが実は、この発生届は、性急にウェブ化すべきでない。誤解を恐れずに言えば、ファックスでの報告が「現段階では」望ましいのである。

前回の寄稿において、私は新型コロナ対策を支える最前線である保健所の苦境について記したが、その後、4月に入って各地で保健所がパンク状態であることを伝える報道が多数なされた。そのなかには、保健所にファックスされる発生届を、保健師がパソコン入力する煩雑さを伝えるものも含まれていた。

にもかかわらず、なぜファックスでの報告が現段階では望ましいのか。今回は、公衆衛生分野の情報化に関わってきた立場から、普段日の当たることのない公衆衛生行政の情報化が抱える問題という観点から解説したい。

いっけん非効率な患者発生届の運用には、一般には知られることのない公衆衛生行政内部の話が多く関わる。シンプルに言えば、この問題は日本の感染症対策の体制に由来しており、「患者発生届だけ」をウェブ化しても問題は解決しない。それどころか、この部分だけをウェブ化することで全体ではより効率が下がってしまう懸念もある。この問題は、短期的に予算を掛けても一朝一夕には解決しない。

以下では、その背景を、「アカウント管理の問題」、「医師側の問題」、「保健所側の問題」、「施設間連携の問題」、「検体管理の問題」の5点に分けて解説したい。

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