日本人はなぜ「人権」をうまく理解できないのか、その歴史的理由

抵抗権を骨抜きにされた日本の「人権」
森島 豊 プロフィール

迫り来る人権の危機

多くの日本人は戦後平和憲法のもとで欧米の民主主義と人権が確立し、戦前の思想は無くなったと考えている。ところが、日本政府は精神的な領域での国体の継承を憲法制定の国会審議で確認していた。そのために憲法担当国務大臣に抜擢された金森徳次郎は、憲法が変わっても一君万民の国体の本質は変わらないと国体不変論を貫いた。「水は流れても川〔国体〕は流れない」という比喩を使い、形式的には欧米型をとりながら、精神的に戦前と戦後を継続させたのだ。これぞ和魂洋才である。

 

日本にはこの構造原理が潜在的に存在しており、今やその命を吹き返している。戦後75年を迎え、戦争体験者が少なくなってきた2020年、精神的な日本の人権を法制化する動きが加速している。自民党改憲草案の「人権規定も、我が国の歴史、文化、伝統を踏まえたものであることも必要だと考えます」*4という言葉にそれが現れている。

重要なことは、日本の人権思想は経済不況に陥ったとき、為政者であっても操作できない爆発的力を国民に発揮させる可能性があることだ。昭和維新期、一向に改善しない貧富の格差や経済的な不景気は、政府への不満を募らせた。その背後では維新の改革が不徹底であるとの認識があり、徹底的な平等の実現を叫ぶ声が爆発した。

最初の狼煙をあげた朝日平吾の背景にスペイン風邪による経済不況の影響があったことを鑑みるとき、現代のコロナ禍による経済不況がもたらす影響は決して小さいとは言えない。政府も国民も欧米型によってかけられた歯止めを外さないことを願うばかりだ。

【注】
*1 自由民主党『日本国憲法改正草案 Q&A 増補版』一三頁。
*2 97条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」
*3 「徴兵の詔と告諭」『軍隊 兵士』六八頁。
*4 自由民主党『日本国憲法改正草案 Q&A 増補版』一三頁。
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