日本人はなぜ「人権」をうまく理解できないのか、その歴史的理由

抵抗権を骨抜きにされた日本の「人権」
森島 豊 プロフィール

一君万民の平等論のテロリズム化

日本人に平等意識が高いけれども、人権意識が低いのは、日本の人権が抵抗権を骨抜きにした一君万民の平等思想だからだ。天皇を根拠とするこの平等思想は、弾圧された自由民権運動や部落解放運動の思想的受け皿となり、民衆に広がった。そして昭和維新の時代を迎えるのだ。

一君万民の平等思想は、経済不況により格差社会に不満を抱いた人々にテロリズム的行動を起こさせた。その発端は安田財閥の安田善次郎を暗殺した朝日平吾の事件だ。ウイルス感染の流行(スペイン風邪)と戦後恐慌(第一次世界大戦後)による不況の中で巨額な富を得ていた善次郎の暗殺は社会に衝撃を与えた。自害した朝日の遺書には天皇を根拠とする平等思想から「天誅」を加えたと綴ってある。

安田善次郎
 

その直後、朝日の影響を受けた何者かによって原敬首相が暗殺される。二・二六事件を起こした青年将校も一君万民の平等思想から経済的利権を独占する支配階級に行動を起こした。当時、彼らに理解を示す庶民も多かった。

一君万民の統一理念は、平等思想と結びついたことによって、それを考えた人々が想像もしなかった方向へと向かった。天皇への熱狂的忠誠心を抱いた国民がそれを担うことによって、もはや製作者が操ることのできないほど力を発揮し、暴走したのである。

それは二・二六事件を起こした青年将校に現れており、一億総玉砕で太平洋戦争へ突き進んだ日本人の姿に現れている。君主に抗う抵抗権を認めない万民の平等意識は、忠誠理念と結びついているため、神的存在に支えられた正義の戦いをはじめるとき、国民全体をして自らへの歯止めを失う可能性が大きいことを歴史は物語る。