「芸人一本の時代は終わった」会社員になったハチミツ二郎が見る未来

アフターコロナの光明になるかもしれない
田崎 健太 プロフィール

「旧時代の芸人」はどう生きるか

芸人になったばかりの二十代のハチミツ二郎が、今のハチミツ二郎を見たらどう思いますかね、と聞いてみた。すると「こんなに生きなくて良かった、くらいじゃないかな」と笑った。

では、五年後、五十歳のハチミツ二郎はどんな風になっていると思いますか、そう返すと、

「五十まで生きていないんじゃないかな」

と冗談っぽく言った。

「本当に生きているかなぁって。(二年前の)心不全があってから、年に一度の単独ライブをやる度に、これで最後かもしれないって思うようになりました。それで気合いを入れるということじゃなくて、単に、次はないかもしれないという頭になるんです。

そうすると、不思議とチケットが即日完売するようになった。変なもんで、(2009年の)M-1に出た次の年なんて、チケット売るのに苦労したんです。今はテレビに一切出ていないのに、勝手にチケットが売れる」

 

ハチミツ二郎の話を聞きながら、社会変動という言葉を思い浮かべていた。

ぼくたちノンフィクションの書き手は、取材の際、いくつかの節目を意識する。第二次世界大戦、高度経済成長、バブル崩壊、東日本大震災などである。こうした大きな社会変動に人間は必ず影響を受ける。今回の新型コロナウイルスはそこに加わることになるだろう。

すでに絶滅危惧種であった、狂気を抱えた旧時代の芸人たちがウィズコロナ、アフターコロナでどう生き残るのか。ハチミツ二郎の選択は一つの光になるかもしれない。

それは芸人とITサラリーマンという “掛け合わせ” である。

彼はその切り替えを楽しんでいるように見える。

「(芸人やっているときは)アサヒのスーパードライ飲んでましたけど、(サラリーマンモードのときは)スーパー行って(発泡酒の)クリアアサヒ買ってます」

ハチミツ二郎は芸人らしく一筋縄ではいかない男である。刹那の言葉を口にするが、未来への多少の手応えを感じていることは間違いない。

(了)

関連記事