ハチミツ二郎がIT企業の正社員に…?「コロナ時代の芸人の生き方」

サラリーマンになろうと思った理由
田崎 健太 プロフィール

就職して感じた「芸人の世界の特殊さ」

彼が入社したソノリテは、二〇〇九年設立のIT企業である。企業内のコンピューターシステムの構築、マイクロソフト社のクラウドサービスのコンサルティングや教育、開発を業務としている。

「『Office 365』というのがあって、それを一つ一つ勉強しています。それこそ、クリックとダブルクリックの違いから。動作としては知っているけど、人に説明できない。ウォーターフォール開発とフロントエンド開発の違いとか、白紙の状態から表を作ったりとか。リモートで講義してもらって、復習テスト。ぼくはもともと、コントの台本もiPhoneでメモをして相方にLINEで送るぐらいだったんですけれど、今はちゃんと枠を作って(文字を)打ち込めるようになりましたよ」

研修を受けて改めて感じたのは、自分のいた世界――芸人の世界が一般的な社会の流れとかけ離れていたことだ。

 

「芸人そのものの(吉本興業との)雇用契約もはっきりしていない。俺自身、それは悪いことだと思っていないんです。契約どころか、(下積み時代は)殴る蹴るが当たり前、今じゃ言えないような理不尽があった時代です。ぼくが学んでいるOffice 365って、例えば社長とぼくがチャットをしたら、社員の何人かが(内容を)読むようになっている。

だから上司が部下に、てめぇ、この野郎みたいなことを送ったら、みんなに分かってしまう。殺すぞとか書いたら、他の人がこれはちょっとまずいんじゃないかって突っ込めるし、データとして残る。みんなで(情報)共有することでパワハラ、セクハラができなくなる、そんなシステムを扱っているんです」

そして自分自身が、組織の仕組みを理解しておらず、“加害者” になっていたかもしれないとも思った。

「殴る蹴るというのは、今はないです。ぼくの時代は当たり前だったから、まあ、やられ損。被害者です。

ただ、マネージャーに『二ヶ月分のスケジュール送れ』とか言うじゃないですか。なんですぐ送って来ないんだ、って思うことは多々ある。でも今、表を自分で作ってみると、俺はすぐにやれって言ってたけど、あいつらはこんな風にやっていたんだと。マネージャーが六組(の芸人を)担当していたら一二人。中には芸人につききりにならなきゃいけないこともある。その合間にこういう作業をしていたんだと。(その苦労を分からず)俺の方がパワハラをしていた可能性もあるんです」

でも、実際(スケジュール表を送ってくるのは)遅いんですけれど、と鼻で笑った。