手取り16万円から年収500万円に

香寿美さん曰く、シングルマザーは男性から低く見られがちだが、反面、女手一つで子どもを育てるその境遇に、必要以上の同情を示す男性も一定数いる。

「実際、私を雇うことで救ってあげようと男気に酔うタイプの所長が現れて、その事務所に正社員として入りました。そういう人ってセクハラもすごいんですけど、実害がなければ何言われてもいいや、と割り切りました」

手取りは23万と大幅に増えたが、実力にサバを読んで入社したため、仕事はキツかった。「一人で決算までできると言いましたが、できるんですけれども時間がかかるんです。それで寝る時間も惜しんで勉強し、土日も子どもを職場に連れてきて、応接室でビデオを見せながら仕事をしました」

実は香寿美さんは最初から、その会計事務所にずっといるつもりはなかった。会計事務所にいる限り、税理士などの資格がなければこれ以上、給料が上がる見込みはない。
「2人の子持ちで40歳近い私が、今から仕事をしながら勉強をして税理士になるのは不可能に近い。だから、ここで実力を身につけたら、一般企業に転職するつもりでチャンスを狙っていました。4年後、担当していた企業から『うちに来ないか』と声をかけてもらい、そこの経理部門責任者として移籍したんです」

4年間、必死で勉強し仕事をしたおかげで、香寿美さんにはしっかりとした力が身についていた。その香寿美さんを手放したくない会計事務所とぜひ来てほしい担当企業との間で、ひと悶着あったほどだ。
「なんとか無事、転職できてホッとしました。お給料は、はじめに『いくら欲しいんですか?』と聞かれて『500万円……』と言ってみたら、『それだけでいいの?』って(笑)。とりあえず年収500万円からスタートし、その後、少しずつ上げてもらいました」

コツコツと勉強して積み重ねてきた結果が目に見えるようになった Photo by iStock

安定した仕事を得て、香寿美さんはローンを組んでマンションを買うことにした。香寿美さんに万が一のことがあっても、家さえあれば、子どもたちは路頭に迷わずにすむ。

生命保険も見直し、香寿美さんの死後は、子どもたちが月々20万円を受け取れるタイプのものにした。これで、経済的にはひと安心。その後、子どもたちは大学に進んで卒業し、社会人となって自立した。