フィリピンパブの女性と
「本気の浮気」

しかし、2人目の子どもが2〜3歳になったころから、平成不況が本格化。そのあおりを受けて、元夫の会社は経営が危うくなり、ついには会社をたたむことに。香寿美さんは経理の経験を生かし、会計事務所で働くことにした。家事育児に加え、フルタイムでのパート勤務。時間にも気持ちにも余裕がなくなり、元夫のケアまでは手が回らなくなった。

「元夫は個人で仕事を受けていましたが、だんだんお金を持って来なくなって。売掛金が回収できないとか言っていたけど、全部、嘘。フィリピンパブにハマり、女の人にお金をつぎ込んでいたんです。元夫は愛情をたっぷり欲しがる人だったから、私に構ってもらえなくなってさみしくなり、そちらに癒しを求めたんでしょう。元夫としては浮気ではなく本気だったようで、私に離婚を求めてきたんです」

相手はフィリピン人の女性で、自国に子どもを置いて日本に働きに来ていたシングルマザー。日本人と結婚すれば、ずっと日本に住むことができる、子どもも呼び寄せられる。元夫とはおそらく別の意味で、彼女も本気だった。

「私の携帯に非通知で電話がかかってきて、出たら、その彼女で。『私はあなたの夫とこういう関係で、あなたの夫はあなたと別れたいと言っています、別れてください』」

非通知で電話がかかって来て…Photo by iStock

元夫にも彼女にも離婚を迫られてなお、香寿美さんは離婚したくなかった。長く夫婦をやっている間には、いろんなことがあるだろう、それを乗り越えてこそ夫婦だ、と思った。何より元夫が好きだったのだ。
「家事育児はすべて私任せ、お金も持ってきてくれない、そのうえ私が愛情をくれなかったと不満を言っている。酷い人だけど、私は彼がいないといやなんだな、と自分の気持ちが再確認できたんです」

しかし元夫は、家を出て行った。彼女は職場の寮に住んでいたので、そこに転がり込むことはできず、車中泊を続けていたようだ。
「笑っちゃうけど、それが元夫なりの貞操観念だったみたい。つまり、彼女に本気だから、私と暮らしていては彼女に顔向けができない。ある意味、純真なんですよね」

義実家に相談したところ、「思いとどまるように」と息子への説得を試みてくれたが、そこでも頑なな態度だったらしい。
「義父に、あいつはもうダメだ、あんな奴とは離婚したほうがいい、どうか孫を立派に育てて欲しい、と頭を下げられました」

そこまでされて、香寿美さんはついに観念した。