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日本人は自国への偏見を捨てよ〜ゲイツ財団幹部が語る「新・国家論」

コロナ危機、日本は世界に貢献できるか

ビル・ゲイツが創設した世界最大の慈善団体、ビル&メリンダ・ゲイツ財団でひときわ注目を集める30代のリーダーがいる。マッキンゼーを経て、ゲイツ財団で副ディレクターを務める、ハッサン・ダムルジだ。

著書『フューチャー・ネーション:国家をアップデートせよ』が日本で刊行されたばかりのダムルジ氏に、本書の狙いと、新型コロナウイルスにゆれる世界で日本人がなすべきことを訊いた。

(取材:土方奈美、編集:富川直泰)

ハッサン・ダムルジ氏(6月5日にZOOMで取材をおこなった)

――本書『フューチャー・ネーション』のメッセージを説明していただけますか。

新型コロナウイルスの拡大は、一国が解決できる問題ではないことが明らかになっています。フューチャー・ネーションは、こうした世界規模の課題に、新たな角度からアプローチする本です。

世界の課題解決というテーマについて、多くの識者が論じるのは「国連でどんな国際協定を結ぶべきか」「トランプの行動のどこが問題なのか」といったことです。でも、ぼくが伝えたいのは、「世界の連帯を信じる人」と「信じない人」との対立が強まっているこの時代に、「世界が一つに団結するための前提条件を整えるには、私たちが個人として何をすべきか」です。

 

「ナショナリズム」は悪ではない

――本書の重要な指摘の一つは「ナショナリズムは役に立つ」というものです。でも、ナショナリズムは偏狭で人種差別的だ、というのが一般の理解ですよね。

ナショナリズムはこれまで人類が発明してきたさまざまな「ツール」のひとつです。SNSやAIと同様、非常に強力なツールで、使いようによって毒にも薬にもなります。

本書でも書きましたが、「ナショナリズム」や「国家」という概念が悪いのではなく、問題は「人間の本能」なんです。大事なのはそうした本能をどう飼いならしていくかです。

どういうことかというと、私たちが旧石器時代から現代まで発展できたのは、「敵」を作って互いに殺し合うという本能をうまく手なずけ、互いに協力しあうすべを身につけてきたからです。「ナショナリズム」や「国家」もまさにそういうツールです。

日本もかつては各地に封建領主が乱立していたのが、「国家」という概念が生まれたことで、みながかつてないほど団結する単一国家となったわけですよね。

そもそも「国家」という概念は国と国の対立を招くためのものではありません。その本質は、人々の力とリソースを集めて、代議制の政府をつくることだったんですから。

私たちには「ナショナリズム」や「国家」について、負の側面ばかりに注目しがちです。この本ではそうした誤解を解きたい。